
終わりに
情報機器の展示会に、人は何を求めて行くのだろうか?
最新鋭の技術、高性能のパソコン、これからの社会のあり方、そのようなものがもしかすると見つかるかもしれない。それが動機なのだろうか?
もしそこで、自分の20年後くらいを思わせるような高齢者が、楽しそうに情報収集をしていたら、自分の子供と同じ位の障害児が、軽々とネットサーフィンをしていたら、まさにその展示会場は、未来志向と呼べはしないだろうか?
来世紀の日本は、高度情報化社会であり、高齢化社会である。情報化の恩恵を最も受けるはずの障害者や高齢者こそ、情報機器展示会の、最も熱心な来場者になる可能性も大きいのである。デパートやホテルなどのサービス産業は、今ではこぞって車椅子を常設したり手話のできる社員を養成するようになった。福祉や社会貢献ではない。ユニバーサルサービスという概念は、お客様への適切なサービスの一環なのである。展示会ビジネス、ひいては情報産業そのものも、あらゆる人々に情報を提供するサービス産業としての意識の変革、ユニバーサルデザインへの理解が求められている。
ボランティアとして参加してくださった、マイクロソフトの若い社員の方のレポートを、終わりの言葉として、お伝えしたい。
感想ということで、あまり細かいことは抜きにして、自戒も含めて、思ったことをそのまま述べさせていただきます。
今回のアクセシビリティ調査に参加させていただいて、これまで自分が「障害をお持ちの方にとってどうなの?」という視点で物事を見たことがほとんどなかったということを思い知らされました。
受付での対応にはじまり、分かりにくいパンフレット、会場までの長く幅広な通路、広すぎて健常者でも迷いそうな会場、大きな音、何が展示してあるのかよく分からない無人のブ—ス、などなどこういう機会でもなければ決して気づくことのないようなことが多かったと思います。
障害をお持ちの方に対してどのように接すればいいのか迷っていらっしゃるような方もおられるなかで、もちろん丁寧に応対してくださった方もいらっしゃいました。しかし、それはその方個人のお気持ちからの属人的な行動であり、全体として統一のとれたものにはなっていませんでした。
昨日も「企画段階から参加させてほしい」というご意見がありましたように、ほとんどのイベント(イベントに限らず世の中すべてがそうかもしれません)は主催者側もお客様も健常者を中心に企画されていますから、「健常者にとってどうか」という物差しでしか考えられていないような状況だと思います。確かに関係者のほとんどは健常者ですが、だからと言って、障害をお持ちの方が情報にアクセスする環境をわざわざ整えなくてもいいということにはならないはずです。会場にわざわざ足を運んでくださるすべての方々に同じようにメッセージを伝えられなければイベントとしては失敗だと思います。
昨日の報告会でも述べさせていただきましたが、アクセシビリティという考え方は障害をお持ちの方のみならず、広く高齢者の方、機器の操作に慣れていない方までを含むものであり、これらの方々にとって使いやすい、過ごしやすいということは、ひいてはそれ以外の方々にとっても使いやすいもの、過ごしやすいということにつながっていくと思います。自分も含めて健常者のちょっとした配慮でアクセシブルな環境は作れると思います。