ComJapan1999 アクセシビリティチェックレポート

田川 順子さん(30歳代)

「障害者・高齢者に配慮していたブースはどんな作りだったか」

ブースの作りや構造に関しては、広くて段差もないところがほとんどで移動面での問題はなかった。が、展示台が車椅子の高さに合わせられているところは皆無であり、要求すれば展示物を下ろしてくれても盗難防止用のひもが短くて、車椅子使用者の膝元まで下ろせるのがぎりぎりであり、ひっくり返して裏面を見たりといったことはできなかった。液晶画面の製品が増えており、下から覗きこむのでは画面が真っ暗になってしまっていることにまったく気がついていないようだった。「この位置からじゃ真っ暗なんですけど」というと、傾けて見せてくれるといった対応はしてもらえた。でも、ただ見るだけではなく実際に触ってみたいということもあるので、展示用のテーブルが高さが簡単に変えられる機能の付いたテーブル(高いんだな、これが。もうちょっと安いと普及するのに)を使用して、車椅子のひざから下がまっすぐテーブルのしたに収まるようになっていればいいのに、と思った。
一部の大企業では1日中大音量のショーがやっており、説明をしてくれても聞き取れなかったり、こちらの話しも相手に通じにくいようだった。一部、ブース内に段差がわざわざ設けられていたり、通路の中央にガラスケースの展示ケースがコの字型に並べられていて、車椅子ではどうやっても覗くことができないブースがあったが、ここは人のサービスがとてもよく、道を明けてくれたり、車椅子の前輪部を数人がかりで持ち上げてくれたり、邪魔なカタログケースなどはさっとどかしてくれたりしてくれた。ブース内でやっているビデオなども「ここで見えますか?」と声をかけてくれた。
全般的にただ商品を陳列しているだけといったブースが多く、創意工夫に欠けているのが残念だった。これでは量販店の店先と同じと思ってしまった。せっかくの機会なんだから、どうやったら対象製品が生活の中で生きていくのかの具体的な使用例などをPRしてほしかった。ただ単にパソコンの初期画面だけがずらーと並んでいても、初心者には難しそうという意識を強く持たせるだけなのに...

「望ましい接客態度としてどんなものがあったか」

どこも車椅子の相手方に声をかけるときは、腰をかがめて目線を同じにして話しをしてくれた点は良かった。健常者の私に向かって話しを始める人でも、「あの、彼女もネットワーカーで情報機器を使いこなしているんです」というと「失礼しました」と言って両方に向かって話しをしてくれた。携帯電話から自動販売機のジュースが買えるシステムや着払いの宅配便のカード清算用デバイスなど、キャッシュレス社会を想定した製品などは、小銭の管理の難しくなる高齢者や障害者を開発のターゲットとしているものもあり、そのような製品を開発している会社のブース担当者は特に親切だった。
明らかにビジネスユースを前提とした製品(ネットワークアナライザとか)のみを扱うブースでも、「どんなものか説明して」というと親切に応対してくれた。ま、中には「こんなこと話してもしょうがないでしょ」と取れるような態度もあったが、怒り(私はすぐキレルほうですが)をかうほどではないと感じた。責任者を出せといったら、しばらく待たされた挙句、本当に偉そうな熟年男性社員が出てきて面食らってし まった。負けるか、と思って具体的にいろいろ文句言ってきたけど。

「インターネットを使った障害者の意見集約についてどう思うか」

非常に有効な手段だと思うし、企業へのPRにもなると思う。今回はMLのタイトルのつけ方のルールなどがなかったため、誰がどんな意見をだしたかなどが把握しにくくなってしまったので、次回からはその辺の管理をもう少し上手に進めていただけるといいな、と思った。
ただ、DOS環境で読んでいたり、操作が大変な肢体不自由者にとっては話題のスピードについていくのが大変なのではと思った。もうすこし、早い段階でスタートできれば良かったのではないかと思う。
また、途中で個人情報が誤って流れてしまったり、といったことはハッカーの傍受といったリスクを考えると本当に冷や汗ものである。何らかのセキュリティ対策を取っていれば安心していられるが...

「その他」

今回議論が盛んだった駐車場や休憩所の件が盛り込まれなかったことは非常に残念だった。ソフト面も大切だが、ハード面でのバリアがクリアされていかなければ、障害者や高齢者がなかなか外には出て来れないのが実情であろう。休憩所の設置などはセキュリティ面でのリスクを伴うからしり込みされるという話しをパーティで聞いたが、警備員を重点的に配置する、警報ブザーを設定するなどで予防することも可能であるはずだ。それでも、なんだかんだいわれてしまうのが日本の社会であるが、この壁を超えていくためにはやはり設備がなくても行く、実際に足を運んで要求していくといった積極的な姿勢が障害者や高齢者自身に必要であろう。

「最後に」

パートナーの秋山さんをはじめ、みなさん、ほんとうにご苦労様でした。今回私はATACにも参加したのですが、いろいろな思いを抱えて帰ってきました。実際にこんなに障害のある方と身近に接したのは初めての経験で、いろいろ勉強になりました。娘の将来をまもるため、自分自身の未来を守るため、今、「健常者」と言われる人たちが持っている権利や自由をどんな状態になっても、またどんな人にも保証されるような社会を築いていきたいと思います。
皆さんに会えて、本当に嬉しかったです。またどこかでお会いしましょう。


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