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2003年CSUNツアーレポート:関根千佳(9)

CSUN大学キャンパスツアーについてその2

SDR(Students with Disability Resources) のスタッフに話を伺った。
今回は30名近い団体で訪問したので、部屋を準備してくれた。聴覚障害を持つスタッフのクリスティンさんが手話通訳を介して学生に対するサポート体制を紹介してくれる。 聴覚障害の学生に対しては、テストを始めゼミや学生生活などにおいてはすべての講義の情報をノートテイクで保障する。視覚障害の学生には代替フォーマットのデータを支給する。学習障害や精神障害の学生には、上記に加え、テスト時間の延長や支援技術の利用をサポートする。 これは、フルタイムの学生も、聴講生も同様である。Webサイトは当然アクセシブルで、WAI(Web Accessibility Initiative)のガイドラインに沿っている。
コンピュータラボにも必要な障害者支援技術は揃っている。勉強するために必要な支援は、ハード、ソフト、人的サービス、同級生や学内スタッフの意識も含めて、自然に行なわれているという印象を受けた。
もともと、カリフォルニアの州立大学は障害者支援に対しては積極的であるが、このノースリッジ校は、全国でも有名な障害センター(Center for Disabilities)を持ち、障害者支援技術の研究機関としてRERC(Rehabilitation EngineeringRecearchCenter)の一つに認定されているのであるから、障害学生の受け入れには積極的である。
SDRのスタッフは13名で、一般的なカウンセラーを始め、学習障害や精神障害の専門家も常駐しているとのことであった。 850名を越える障害を持つ学生は、ニーズに応じて、必要な支援をいつでも申し出れば受けられるとのことであった。
しかし、一体何人くらい障害を持つ職員がいるのか、といった質問にはわからないと言われた。自分でも、こんな質問をしたことを反省した。 かつて外資系にいたとき、障害を持つ社員数って、把握していなかったじゃないか。そんなのは、お国に障害者雇用率を報告するときだけ使えばいい。増えてい る精神障害者を加えれば、本当は報告数よりもっと多いだろう。何人いるか、が問題じゃない。その人たちが、ニーズに合ったサポートを受け、楽しい学生生活 や社会人生活を送っているかどうかがもっと大切な問題だったはずだ。いつのまにか、数字でものを見たがる大人に戻っていたような気がして、それから少し落 ち込んだ。(「星の王子様」の中の、ものごとを数字でしか表せない大人を思い出してください。ピンクのレンガでできていて、窓にゼラニウムの鉢のあるきれ いな家、って言ってもわからない大人には、10万ドルの家を見たよ、といわないと驚いてくれないものなのです)

学内の庭のテーブル

学生ガイドに学内を案内してもらう。504条の影響できちんとアクセシブルなのは言うまでもない。プールも図書館も当たり前。膨大な図書を検索して自動 アームが取り出しに行くマシンは、かつて日本鋼管で稼動していた膨大なテープを自動的に取り出すシステムにそっくりだなあなんて思いながら見ていた。物理 的なオブジェクトが消えない限り、こういうシステムは生き残るのだろう。また、新入生歓迎の時期にクラブメンバーが部員勧誘を行うための椅子とテーブル は、ランチにも使えるし、バーベキューにも便利とおどけて説明していた。これもユニバーサルな使い方が出来る例かもしれない。

後半は、CAPD(Center for Aqur Physical Disabled)の設備を見に行った。肢体不自由のかたの主に水中でのリハビリ施設である。これは実は3月28日がお披露目予定ということで、われわれが世界初の見学者だったのだ!大きなプールが見えるけど、おや、ふたがしてあるらしい。まだ使えないのかな、と話していると、ドクターがにこやかに現れた。「ではお見せしましょう。車いすをおきますよ」言うまもなく、床は下がり始め、プールにはどんどん水が入り始めた!おおっ!見る間に、水を満々と張ったプールに大変身である。「高さも、水量も、自由に変えられます。どんなユーザーのニーズにも対応が可能なのです」プロのインストラクターがてきぱきと指示に従って動く。高さや温度の違ういくつものプールがある。 障害によっては自分での温度調節が難しいため、設備側で調整が可能なのだ。こまやかな配慮に脱帽する。

床と思いきやプール以外にも、楽しんでリハビリができるような機器が多数揃えてあり、それぞれ説明していただいた。頚髄損傷や脊髄損傷の人たちが、歩けるようになるた めの、トレーニングマシンがたくさんあった。身体自体が持っているはずの、歩いていたときの記憶を甦らせる。自分のイメージの中に、歩いている自分を思い 出させる。多くのマシンが、熟達したインストラクターと共に、大学の学生のリハビリ指導に使われる。指導は学生にとって、単位となる。この施設は、この大 学の肢体不自由の学生を始め、地域のシニアや障害者に利用してもらうためのものだ。これだけ大規模な設備を備えているところは世界に類をみないとのことで、おそらく世界中から利用希望者が殺到するだろう。地域でもすでに予約待ちの状態だという。オープン後にもまた来てみたいものだ。

 


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