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2009年CSUNツアーレポート:関根千佳(6)

3月18日 その2 トーランス図書館のアクセシビリティ

図書館 午後は、カリフォルニア大学アーバイン校にサバティカルで滞在中の加藤先生に迎えに来ていただき、トーランス地区の図書館を訪問した。ここは、LA地区でもっともアクセシビリティに配慮した図書館だと聞いていたのが、残念ながらスタッフはCSUNへ出かけているとのことだった。ま、アポもとらずに来た私が悪い。しかし、たまたま対応してくれた年配の図書館スタッフは大変詳しく、親切で、図書館がもっている支援技術を全て見せてくれた。ごく一般のスタッフがここまでアクセシビリティに知識を持っているというのは、日本のレベルでは考えられないことである。拡大読書器、拡大ソフト、拡大図書拡大文字のキーボードといった、昨日のLA中央図書館における弱視者対応はもちろんのこと、音声読み上げツールや肢体不自由者向けのキーボードや特殊なマウス、スイッチなども常備してあり、依頼があればいつでも貸し出せる体制になっていた。

拡大図書のコーナー 備え付けの支援機器

図書館スタッフ 彼女によれば「うちなんてまだまだよ、ロングビーチの図書館は、昨年リニューアルして、もっともっとアクセシビリティを充実させたというわ。行ってみたら?」あっという間に地図や情報をプリントアウトしてくれた。おそらく60代後半とおぼしき図書館スタッフである。そのITリテラシーには、感動するばかりだ。司書とは、検索能力が必要だという認識が行き渡っているのだろう。図書館のIT装備が増えると、書籍文化を破壊するとして、なんとなくITを毛嫌いする風潮の日本とは、かなり道具としての位置付けが違うようだ。
ちなみにここには、マンガもたくさんある。日本のマンガもアニメも人気なのだろう。図書館というものが、市民の生活にとって大変重要な位置を占めているのが見える訪問であった。

 加藤先生は、元IBMの研究者で、今は関西大学で認知心理学を教えている大先輩だ。数年前からIBMとの共同研究をいろいろ行っていたのだが、たまたま今年、カリフォルニアに来ていらした。昨年、CSUNにも来ていただいていたことを考えると、二年続けて、LAでお会いすることになる。ご家族の事情で、単身赴任ということだ。次第に年令があがると、抱えているものも多くなり、おいそれと海外へ全部の家族が移動することは難しくなるものなのだ。でも、人生の間に一回は聞きたいと思っていた教授の講義がここで聴けたので、もう思い残すことはないと笑っていらした。なんだか、しみじみしてしまう。
この後はマンハッタンビーチのサンアンドムーンカフェに行く。ここで食事をするのも、来年CSUNがサンディエゴへ移ったら最後かなあと思うと少し寂しかった。

 毎年、私はCSUNの会期中、気分の揺れが大変大きくなる。初日は、CSUNへたどり着いたことが純粋に嬉しい。で、二日目は、日本との埋めがたい格差を感じてどーんと落ち込む。しかし3日めくらいから、ま、アメリカだって世界だって、大変なとこは大変じゃん、と、妙に納得する。そんな波の、2日めの寂しさだったのかもしれない。