
2.接客サービスとマナー
2.1 障害を持つお客様がいらしたら
外資系の企業ではごく普通に障害を持つ方が同僚として働いていることも多いが、日本の企業では残念ながら、まだまだその数は限られている。しかし展示会では、さまざまな障害を持つ方が、お客様としてお見えになる。本来は、接遇マナーの一環としてさまざまな障害に対する知識や、対応の方法を身につけてから、展示会の要員になってほしいと思うが、実際にはどう接していいかわからないこともあると思われる。まずは基本的なことを押さえていただきたい。
- 障害を持つ方がブースにお見えになったら、ごく普通に接すること
- 何もかも手を貸す必要はない。さりげなく、「お手伝いが必要なときはおっしゃってください」と声をかけておく。サポートが要る場合は相手が何らかの意思表示をするはず。
- 介助者が付いている場合も、基本的にはその本人に話しかけること
- 障害に応じて、臨機応変に対処の仕方を変えることができれば望ましい
- 娘を連れていて、彼女は人の話はきちんと理解してるし、Yes/Noは表情でできる人なんですが、まともに彼女にむかって話しかけてくれる人ってすごく少数です。たまに彼女の目をみてきちんと話してくれる人もいますが、養護学校の先生だったり医療関係者だったり...。一般の人で重度の人にこういう応対できる人ってすごく貴重だし、最初はわからなくても社員トレーニングとして教育されていけば、経験を積むうちにその人なりの重度障害者とのコミュニケーションの手がかりが見つかると思うのです。(重度障害児の母)
2.2 障害別の情報保障の方法
基本的な考え方は同じでも、障害に応じて必要とされる配慮は、違ってくることが多い。可能な範囲で、相手にとって最も適切な方法を聞き出し、それに沿った情報提供を行なうよう努力してほしい。
【視覚障害の場合】
入り口では、ブース内の展示品の配置をかいつまんで説明し、本人が望めば行きたい場所まで誘導する。個々の展示品の担当者のところまで誘導したらそこで担当者に、「こちらのお客様が○○について聞きたいとおっしゃっています」と、きちんと受け渡す。展示品の説明も、「ここを見てください、こう動いています」といった視覚に頼る部分は、「画面の右上のほうに地球のようなマークがあり、回転する動きをしています」というように説明するとわかりやすい。これは、人だかりで画面がよく見えない場合に遠くに立っているユーザーに対しても親切な説明となる。パネルの文字も、必要な場合は読み上げるといい。
【聴覚障害の場合】
聴覚障害の方が見えたら、口が読めるかどうかを聞いて、読唇が可能なようであれば、その人の方を向いてゆっくりしゃべるようにする。筆談の方がよさそうだったら、紙に会話を書き取るようにする。展示要員の中に手話か要約筆記ができる人を配置できれば一番いいのだが、中途で聞こえなくなった聴覚障害者の中には手話を使わない人もいるので、相手の望む方法で会話するようにする。経験がなくても、紙の上で会話するのも楽しいものである。
【肢体不自由の方の場合】
展示物がよく見えるよう、さりげなく前の方に誘導する。また、車椅子ユーザーの場合など、上向きの展示物は画面を傾けるなどして、よく見えるよう配慮する。高いところにある品物を取るような場合は状況に応じて手を貸す。これは背の低い高齢者などの場合、子供などの場合も同様である。
【発話障害の方の場合】
聞き取りにくい上に筆談ができないような方の場合は、できるだけゆっくりと何度も話してもらうようにする。5回くらい聞き返しても失礼には当たらない。コミュニケーションエイドのような支援機器を本人が使っている場合はそれで相手の意図を理解するようにする。電子メールを使う方も増えてきたので、自分の名刺を渡して後からメールで質問を送ってもらうようお願いする方法もある。
- ここで問題になるのは、私のように気軽に声をかけられない障害者も存在するということです。聾唖の方はもちろんですが、それまでの生活環境や言語障害などの影響で、初見の人に話し掛けることに対して、抵抗を感じる方もいらっしゃいます。
私個人的には、ナンセンスなことだと思いますが、、、
しかし、現実にそういう方がいらっしゃることを理解していただき、ブースの前で興味深そうにしている方を見かけたら、是非、担当の方から積極的に話し掛けていただければと感じました。(肢体不自由) - 案内する方は「あっち。こちら」ではなく「右、左、何センチ先」というように明確に指示、方向を示してほしい。例えば パソコンモニターでは「画面右上、中央から左より」というようにしてほしい。(視覚障害)
- これ(上記)と類似したものなんですが、道案内してくださる時、電動車椅子を押しているつもりで後ろから「こっちです」と言われると困ります。いったいどっちなんですかと。車椅子の前で「こっちです」と言うか、後ろで「右に曲がってください」というか、どっちかにしてほしいです。(電動車椅子利用者)
- 電動車椅子なのに後ろから押してしまわれるんです。 自分は後ろに振り向けず声も小さいので「これは電動なので押さなくてもいいですよ」と言っても聞こえないらしいのです。なので最初に「こちらは電動ですか?手動ですか?」と聞いてくれるとありがたいですね。また展示会場は人がたくさんいるので慣れていないと大変です。先導してもらって、なおかつその人が道を空ける。それがベストではないでしょうか?(電動車椅子利用者)
- 車いすの人を見かけたら、さりげなく前の方へ入れてくれる配慮があるといいな、と思います。また、どちらにしてもスムーズに案内してくれたり、健常者が使っている場合にちょっとどいてもらえるよう頼んでくれる係り員は必要ですね。(肢体不自由)
- 出展している物についても比較検討できる体験コーナーなど設けてほしいですし色々な視点で説明(ブースを訪れた方々に)的確に対応が出来るアドバイザーがいたらいいと思います。(全ブースではなく必要に応じて)大変な事でしょうが何処か控え室で待機してもらって福祉機器展でも障害者や高齢者対象でもありませんが、出来れば色々な部分で安心出来れば活気的なイベントになるのではないでしょうか。僕みたいに多少の障害をもっていても気軽に出かけられるイベントにしてほしいですね。(肢体不自由)
- 中途失聴・難聴者のためのサポートが要約筆記で、全国で要約筆記者が養成されています。書き取る人が1人で見る人が1人の場合はノートテイクといいます。ちなみにパソコンでも同じことが出来ます。むしろ会場が会場なだけに、パソコンでノートテイクが向いているかもしれません。
各ブースに手話が出来る人がいれぱ良いと思うのは理想ですね。しかし元々難しい内容を手話で表現するのは、とても技術が必要で相当のレベルの手話通訳者でないと無理な場面も多いかと思います。またブースの担当者との筆談もなかなか難しいと思います。
案内所の隣に手話通訳や要約筆記の出来る人が待機する場所を用意し、サポートが必要な人は、待機してる通訳者と一緒に会場を回れるようなら良いかな?と思います。
ただし通訳者も一緒に長い時間歩きまわる必要があるし、コストを考えると大変ですね。
会場のビデオ映像に字幕を入れたり、マイクで話してる内容を同時に字幕で出す工夫も大切ですね。(要約筆記者)
2.3 パンフレット
会場で配られるパンフレットは、企業のイメージを大きく左右する。また会場では足りなかった情報を補うために使う場合も多い。しかし、その内容や表示のしかた、配布方法などに一工夫欲しいところである。文字は大きくてわかりやすいほうがよく、形状も統一的である方が後から扱いやすいという意見もあるが、重くてかさばるので各企業で出展製品に関するリンク集だけを1枚配ってくれればよいという意見もあった。
- パンフレットはできるだけ簡潔な内容にしてほしい。各ブースごとで何を売りたいのか、何を主力商品としているのかわかればいいと思う。文章にしても10行程度ごとに"一段落"としてほしい。「。」のあとは必ず改行が望ましい。長々書かれても読む気がうせてしまう。
マシンスペックは、別表として大きく書いてほしい。
段組は、2段くらいまでが限度。新聞、週刊誌のように「あっちいったりこっちへ下がったり」のような書き方では読めない。拡大鏡を使っても見づらいし、文章のつながりが行方不明になってしまう。
連絡先mail fax tel URL等は、目立つようにはっきり大きく書いてほしい。ともすれば商品案内ばかりが先になってしまっているパンフレットが多い。またI (アイ)と1(いち)とl(小文字のエル)。O(オー)と0(ゼロ)がはっきり判読できる字体を使うかもしくは注釈をつけてほしい。高齢者にも必要です。(弱視者) - 車椅子利用者の場合、ほとんどの人は両手がふさがっていたり、片手が余っていたとしても、体のバランスを取るために片手を使っていたりするので、車椅子を押す取っ手に引っかけられるような袋を入り口部分で配布してもらえると助かります。(肢体不自由者)
- 今後は、フロッピー渡しとか、その商品の解説の載ったホームページリストを渡すとかにすると、持ち帰りペーパー類が減るのではないでしょうか。環境問題にも配慮できると思います。(主婦)
- 確かにパンフの大きさを統一してくれると整理しやすいし、フロッピーなどにしてもらえればもっといいですよね。環境にもいいし。ただ、OSとかの問題で読み込めない人がいたり、パンフの方が理解しやすいという人もいると思うので、選択肢があるといいですね。でも、パソコンユーザーの多くは、ウインドウズとマックだと思うので、それらのユーザーにフロッピー対応するだけでもかなりのペーパーレス化になると思います。(肢体不自由)
- 僕の場合、自分で備え付けたDバッグとかにパンフやお土産を入れると、日常的に使う(たとえばストローとか)小道具が、パンフやお土産の下敷きになってしまうんです。すると、いざ使うときになると、介助者が取りにくい状況になってたりするんです(^^;。
あと、パンフとかの整理的なことを考えると、やっぱし袋をもらえると助かるなぁって感じなんです。パンフがくしゃくしゃにならずにすみますし。(肢体不自由者)
2.4 アンケート記入
会場でアンケートなどに記入する際、困難を感じている高齢者や障害者は多い。机の位置を工夫するか、椅子とテーブルを設置するなどして、車椅子ユーザーや高齢者が安定した状態で記入できるような配慮が必要である。
- 展示会のブースをみて回るとアンケートが配られますよね。私、台の上でも書けないんです。車椅子から降りて床の上でないと、人が読める文字にはみえないんです。しかも一人で行動するのと、言語障害もあるので、代筆も頼みづらいんです。端末をおくとか、家に帰った後インターネットでできるとかしてもらえるといいですね。(肢体不自由)
- 記入する書類、アンケートは、太い字体で大きめの字が望ましい。筆記具もサインペン程度の太さ。記入欄は、質問用紙と同一用紙上の縦幅に余裕のある横罫線が望ましい。別紙記入では書きづらい。(弱視者)