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3月21日 本会議1日目 支援技術最前線

7:30の基調講演は、毎年のことながら眠い。車椅子のニュースキャスターが彼にとっての支援技術への考え方をテンポのいいジョークを交えて話していたが、後半は寝てしまった。でもみんな、最後はスタンディングで拍手していた。どうも大事な部分を聞きそこなったようだ。今回、昨年感動的なスピーチをしたMicrosoftが来ていないことに気づく。ブースもないし、スポンサーの巨大な広告もない。IBMやSunは毎年どおりブースを出しているのに。


基調講演者John Hockenberryと新所長 Bud Rizer9時20分からずっとセッションに出る。Toronto大学のJutta TreviranusのClick the Captionは面白かった。これもきっと米国政府からのファンドで開発されているのだと思うが、Webやデジタル放送で自動的に作成されたキャプションをクリックすると、手話が出てきたり音声解説が出てきたりする。いわば、キャプションにHypertextがついているのだ。XMLで作っているようだが、Personal Style Sheetという言い方が新鮮だった。手話のWindowを好きな位置に好きな窓枠で表示したりするのがとっても簡単にできる。昨年までは放送のUDは、Closed CaptionやAudio Descriptionをどうデジタル放送やWebに追加するかが問題だった。今年はついに手話の自動作成ソフトなどもごく自然にその一部になってきている。なんだかどんどん技術が進んでいくなという気がする。デジタル放送を教育に使おう、それをユニバーサルに最初からデザインしようという議論は、米国では早くからJutta,Gregg,そしてWGBHのLarryたちの間では議論になっていて、もうここまで進んでいるのかというのが驚きだった。日本では会話にもあがっていないのではないかと心配である。

お昼前にはAFB(全米盲人協会)の、コピーのユニバーサルデザインの発表。全体を作り変えたのではなく、一台の音声認識、スクリーンリーダをつなげて、画面も点字で読めるようにして、という話で、少しがっかりした。まあ、アクセシブルにはなるけど、これってメインストリームへの対応とはいえないんじゃないかしら?ソフトも、もっと一般的なものを使ってね、と意見しておいた。

Traceが共同開発している手話変換ソフト

午後1の、Gregg Vanderheidenの「テレコミュニケーションの未来」は、私にはものすごく面白かった。ブロードバンド、第3世代の電話がやってきたとき、どんなことが起きるのか、15くらいの可能性を話してくれた。Greggのものすごいところは、こうやって話していることが、全くの夢物語ではなくすでに研究も開発もほぼ目途がついていることだ。世界のアクセシビリティをひっぱってきたこの男の夢の強さのようなものを感じる。彼は機器のアクセス、Webのアクセスと、常に時代の最先端を進み続けてきた。その彼が、今やテレコミュニケーションの世界にこんなにどっぷりはまっているのだ。Trace Centerは今ではTelecommunicationのRERC(Rehabilitation Engineering Research Center)として研究をしているので当然といえば当然なのだが。私はいつも彼をお手本としてきただけに、少し意外でもあり、また今後、自分が独立系のITコンサルタントとして彼のコンセプトについていけるかどうか、少し不安になった。国家インフラとつながっていないとできない事業だからだ。ま,日本では支援技術を理解した電話会社は少ないので、すぐには問題は起きないだろうが。 

最後はSSB TechnologyのWeb Accessible Checkerの話だった。システムとしてはそれなりに完成しているように見えるのだが、びっくりしたのは聴衆の反応である。508対応と言ったせいか、そのチェックツール自身のアクセシビリティに視覚障害者からの質問が集中したのだ。こんな小さい会社でも、508のためには自身のアクセシビリティを確保しなくてはならないのだと、改めて認識した。Dougはニッチの企業は除外といっていたような気がするのだが、実際はクレームを受けることは避けられない。508により、米国のアクセシビリティは劇的に進むことをまたここでも予感した。


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