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2006年CSUNツアーレポート:今井朝子(4)

2.CSUN会議における口頭発表の紹介

2.3 支援技術運用に関する発表

タイトル:How to Establish and operate a successful AT center
発表者:Dinah F. B. Cohen, Director
所属:CAP
(参考1)

CAPのディレクターである、Dinahの発表であった。多くのATセンターが失敗していくのを数多く見てきたことから、失敗の原因とその回避方法について発表した。「失敗の原因の多くは、ATセンターのミッション(使命)が不明確であることである。あなたのATセンターは何のためにあるのかを考えなさい。そして、ミッションを遂行する際の関係者と予算をよく理解しなさい。」と最初に述べ、成功例をCAPを例にして説明した。
CAPのミッションは、「障害を持った人に支援技術に触れる機会を作ること、また、障害者自身が専門の担当者と相互にやりとりをしながら適切な技術を知る機会を作ること」であった。そのために、障害者自身が支援技術を評価したりテストしたりするCAPTECという施設を作った。また、具体的には次のような点を重視していると説明した。
★サービスについて
・ 障害者自身にテストをさせること
・ 関係者の関心にあわせて利点や予算などを的確に報告すること
・ 障害者のやりたいことや置かれた環境に合わせて支援技術を選ぶこと
★ATセンターの設備について
・ 客の近くであること(CAPの場合はペンタゴン)
・ 遠方からアクセスしやすいこと
・ センター内がアクセシブルであること
・ 情報通信設備が整っていること
★ATセンターの予算について
・ 障害者のマネージャーに予算について納得してもらうこと
・ 障害者を雇用する団体の目的に対する影響とその範囲を明確に説明すること
・ 雇用者の組織構造と予算の出所を明確にすること
・ 雇用者に対してアクセシブルな環境のメリットを教育し、支援技術が使えるようになるまでの全プロセス(評価と開発、適用、メンテナンス)に対して、予算を得ること。その際には主要人物をよく知ること。
★ATセンターの運営について
・ 雇用とスタッフの配属のガイドラインを作成すること
・ オリエンテーションを行うこと
  ▽センターのミッションとビジョンの理解
  ▽法的な要求事項の理解
  ▽政治的な要求事項の理解
  ▽サービスとその実施のオプションに関する理解
・ スタッフのトレーニングを行うこと
  ▽異なる障害に関する知識の獲得
  ▽オペレーションの更新に関するトレーニング
  ▽施設の更新に関するトレーニング
・ 技術の更新
  ▽CAPに製品を販売した業者は、製品が更新される際にはCAPにすぐに伝え、CAPはそれに応じて製品を更新する
★市場を意識したサービスについて
・ 障害者が成功するためにサービスを使うこと
・ 目的を明確にし、センターを知り使ってもらうための戦略を練ること
・ ATセンターのミッションとサービスを宣伝すること
  ▽プレゼンテーション
  ▽最新のパンフレット、ビデオなど
  ▽他のセンターとパートナーシップを組み、人や設備を共有すること
  ▽デモの日を作る、ウェブサイトを作る、ツアーを実施する
・ 顧客満足を促進するための計画を練ること
  ▽調査を実施し、報告すること
  ▽毎年目標を作ること
  ▽関係者に結果を報告すること

(参考1)CAP(Computer/Electronic Accommodations Program) 情報・支援技術を障害者のニーズに合わせて使えるようにするプログラム。国防総省にある。
最後に、「日本でも同様の問題があるので、とても参考になりました。」とDinahにお礼を言ったところ「ぜひ、日本にも伝えてね!」とものすごく明るく元気に励まして下さいました。Dinahは元気で面白くて頭の回転の速いお姉さまでありました。

タイトル:Accessible Call Centers: An Essential Link To Job Opportunities.
発表者:Mary Jean Smith, Scott McCormack, Paul Rosenfeld,
所属:SSB Technologies/Bart Group, SSB BART Group
http://www.ssbbartgroup.com

アクセシビリティに関するコンサルタント会社であるSSB Bart Groupによる、視覚障害者がコールセンターで働く際の環境整備に関する成功例を紹介するセッションであった。SSB Bart Group は、企業が効率よく資金を使って508条に適合できるようにするために、様々なプログラムを用意していた。企業のトレーニング、508条に適合できるようになるための相談、トレーニングから実施まで全てのプロセスの代行などを行っていた。今回は、MarriotやDeltaで成功した事例をもとに、重要な点を説明した。
最初に、マネージャーや他の労働者にトレーニングの必要性を正しく理解してもらい、トレーニングを実施すべきであることを説明した。そして、トレーニングでは下記の点を考慮すべきであるとした。
・ 視覚障害者の文化をよく理解して会社の文化を視覚障害者に説明する
・ 支援技術のフィッティングとトレーニングを行う
  ▽スクリーンリーダーの導入
  ▽適切なアプリケーションの開発
  ▽点字ディスプレイの導入
  ▽スクリーンに提示される情報を拡大する方法の検討
・ トレーニングに使うものをアクセシブルにする
その他、仕事の時間や量は、一般の労働者と同じくらいにする必要があること、また、盲導犬など、障害に対する正しい理解を教育する必要がある。移動しやすい環境をつくることも重要である。コールセンターで働く場合には、着席する場所が決まっていないので、全ての席をアクセシブルにするか、アクセシブルな環境を簡単に持ち運べるようにする必要がある。


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