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アクセシブル空港賞 審査基準 2016

<はじめに>


障害者や移動困難者が飛行機で旅行をする際の権利に関する法令1107/2006(注1)の採択から10年が経ち、アクセシビリティに関係する多くの進展がありました。本賞は、障害者や移動困難者(注2)が最も利用しやすい空港に「アクセシブル空港賞」を授与することによって、障害者や移動困難者が飛行機での旅行の際に今なお直面しているバリアを取り除くよう、空港に促すことを目的としています。

 

この賞における「アクセシビリティ」とは、車いすユーザーのアクセシビリティだけでなく、全ての障害者や移動困難者のアクセシビリティを指しています。それには建築物や交通(例:空港やその周囲のインフラ)だけでなく、情報そのものやその伝達(例:案内板、ウェブサイト、フライトアナウンス、チェックインなど)も含まれます。

 

評価は以下に列記する様々な基準で行います。法令1107/2006の基本的な要求事項はもちろん含まれますが、革新的な解決方法など、将来的にアクセシビリティを改善するストラテジーや、現在の法規で求められている基準を超える活動も考慮します。応募者は全ての質問に答える必要はありませんが、得点はこれらを基準にして与えられます。

 

申請書は1000ワードまでで、付録につけられる書類は10個までとします。すべての情報はアクセシブルなドキュメントファイル(アクセシブルなPDFかWord文書)一個にまとめて送って下さい。この申請書は、旅行をする機会の多い多様な障害者によっても審査されます。


 <審査基準>

【施設】

  • 空港から、および空港への公共交通(いわばタクシー、バス、電車、地下鉄など)はアクセシブルに動けますか?またわかりやすく案内されていますか?
  • 駐車場、降車地点、タクシー乗り場、公共交通などから、空港ターミナルへの乗換は、交通機関も、歩行ルートでの移動も、アクセシブルですか?またわかりやすく案内表示されていますか?
  • 障害者用駐車エリアが降車や乗車ゾーンに設置されていますか?
  • ターミナル間の移動は、交通機関も、歩行ルートでの移動も、アクセシブルですか?
  • 空港に到着した乗客が、支援を要望し、コミュニケーションする指定場所は、障害者団体によって同意されていますか?それらの場所は、(例:磁気誘導ループ、点字、適切な高さなどにより)明確に提示され、異なる障害のある人にとってアクセシブルですか?
  • 飛行機が離れた地点に着陸したような場合、車いすユーザーに対し、どのような乗降装置が使われますか?(例:リフト、階段昇降機など)
  • 重い電動車いすを積み込む場合、なんらかの適切な装置を備えていますか?
  • 地上においても航空機内でも、車いすで使えるトイレはありますか?それはISOの基準に合致していますか?
  • すべての飲食店は店舗と同様に、車いすでアクセスできますか?
  • VIPラウンジやビジネスラウンジは、障害のある人にアクセシブルですか?
  • 補助犬用の休息エリアが、空港でも航空機においても利用可能ですか?
  • 飛行状況やその他のアナウンスに関する情報が、異なる形式で利用でき、複数の感覚器官を用いてアクセスできますか?(例:拡大音声アナウンス、画面上のメッセージなど)
  • ディスプレイは、正しい高さで表示されていますか?また画面のテキストは、充分なコントラストとフォントサイズを備えていますか?
  • 全てのエレベーターは、車いすでアクセスでき、音声案内や磁気誘導ループを備えていますか?
  • サインは一貫しており、明確なピクトグラムと共に使われていますか?また十分なコントラストおよびフォントサイズですか?
  • チェックインカウンター、案内所窓口、出入国審査窓口は、アクセシブルですか?(例:高さの調整が可能か、磁気誘導ループがあるか、等)
  • 点字ブロックなどにより、アクセシブルなルートが提示されていますか?

 【プロセス】   

  • 支援に関する品質標準は、多様な空港利用者や、障害者を代表する組織と、協力して定められていますか?
  • 品質標準は空港の ウェブサイトに公開されていますか?
  • 空港の ウェブサイトで支援の情報を見つけるのは簡単ですか?
  • 空港の緊急避難手順に、障害者に関する観点は含まれていますか?
  • 法令 1107/2006 の定める最低基準を上回る、具体的な支援は何か準備されていますか?
  • 空港は、(車いすなどの)移動用機器が、破損、故障、または紛失した際などに、予備の機器を臨時に手配できますか?
  • 苦情申請の手順は、アクセシブルな様式で提供されていますか?
  • 障害者がプライバシーを守れる環境で、セキュリティチェックを受けられる代替方法がありますか。
  • 空港のウェブサイトは、支援の予約を含め、WCAG 2.0(注3)または欧州規格 EN 301549 の9節(注4)に準拠してアクセシブルですか?
  • 電子搭乗ゲートと同様に、チェックイン機器やセルフサービス端末は、障害者にとってアクセシブルですか?

 【人々】

  • 空港はすべての空港職員、さらに関連会社のすべての職員に対し、障害に関する課題(障害理解教育および各仕事特有の教育の双方)について、適切な研修を行うことを義務付けていますか?
  • 研修は、障害者を代表する組織と協力して実施されていますか?
  • 職員に対する、障害に関する研修や再教育のコースは、どのくらいの頻度で行われていますか?
  • 移動困難者に対する支援の研修はECAC Doc 30 Annex,5-G、研修マトリックス(注5)に基づいて行われていますか?
  • 空港は、障害者雇用を推進するための採用方針を持っていますか?

 【その他】

  • 空港は、障害者の旅行を支援したり、インクルージョンを推進するための、なんらかの新たな施策を持っていますか?
  • 空港は、移動困難者のアクセシビリティを向上させるための将来計画を持っていますか?
  • 空港は、アクセシビリティが未だに不十分な点を改善するための、期限を定めた実行計画を持っていますか

<訳者注釈および解説> 

(注1)障害者や移動困難者が飛行機で旅行をする際の権利に関する法令1107/2006

この章のベースとなっているEUの法令は以下のもので、本文は英語です。

http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=uriserv%3Al24132

法令のサマリーもこの中にあります。後半の方には、空港関係者の義務についてまとめてあります。今回の賞は、これらの欧州における法律を「超えた」空港の取り組みについて、評価の対象としています。すなわち、この法令で示されている内容は、欧州の空港では当然のことであり、守られるべき権利となっています。

 

(注2)移動困難者(PRM)

今回、たびたび出てくるキーワードに、移動困難者(PRM:Persons with Reduced Mobility)があります。年齢や障害をとわず、移動に困難がある人のことを指します。そのようなお客様は、必要があれば支援するという明確な意思が示されています。そのため、日本のような障害者手帳を持っている人だけでなく、高齢者、妊産婦、ベビーカーユーザー、子ども連れ、ケガをしている人、病人など、歩行や移動に困難を伴う人の全てが含まれるのです。空港はこれら全ての人に配慮すべきとしている点では、バリアフリーというより、さらにユニバーサルデザインであると言えます。

 

(注3)WCAG 2.0

WCAG 2.0 とは、Web Contentes Accessibility Guideline 2.0のことを指します。Webサイトが、障害のある人にとってアクセシブルで使いやすいものとなるための作成基準を定めたもので、世界の標準となっています。日本でもこれに準じたJIS規格 X8341-3 が存在し、公的機関のサイトはこのJISに準拠することが要求されています。

例えば、視覚障害の人に音声読み上げで情報が伝わるようになっているか、弱視の人が読める適切なコントラストか、色覚障害の人にも読める色使いか、肢体不自由の人がキーボードだけでも使えるか、聴覚障害の方に伝わるよう映像に字幕があるか、などが定められています。参考のため、日本語訳のサイトを紹介します。

http://waic.jp/docs/WCAG20/Overview.html

 

(注4)EN 301 549  第9章

欧米では、公的機関におけるICTの公共調達を、アクセシブルなもの以外は禁止するという明確なルールがあります。アメリカのリハビリテーション法508条は1986年に成立し、1999年には違反した際の罰則が強化されました。これと同様のヨーロッパの基準が、標準化団体であるETSIやCEN/CENERICなどで設定されています。情報アクセシビリティについての基準がEN 301 549で、Webはこの9章で定義されています。基準自身のサイトは、英語版の大きなPDFになるため、ここでは、この規定が入っているETSIの、人間工学とアクセシビリティに関する標準一覧の英語サイトを、参考として紹介します。

http://www.etsi.org/technologies-clusters/technologies/human-factors-accessibility

 

(注5)ECAC Doc 30

ECAC Doc 30 とは、European Civil Aviation Conference (欧州民間航空協議会)で定めた、障害者や移動困難者の移動を保証するためのガイドラインです。この文章で示された、Annex 5 は、特に研修に関して、その品質や講師のスキルについて、詳細に規定されています。以下の英語サイトは、ECACの中のもので、このサマリーとなっています。これを見ると、アクセシビリティに関しては、欧州とUSが協働していることがわかります。

https://www.ecac-ceac.org/prms

規定の本文は以下のサイトになります。かなり大きな英語のPDFが開きます。

https://www.ecac-ceac.org/documents/10189/51566/DOC30-Part_I-11thEdition-Amend3-Sept2014-e.pdf/7ce681fb-5cb1-439c-98da-085716e6ace5


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