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「2000年 テクノロジーと障害者」会議ツアー

3月20日 Stanford CSLI & SunMicrosystems

<スタンフォード大学CSLI(言語情報研究所)>

NEILがATMのTAS制御を説明朝からシリコンバレーへ向かう。目指すはスタンフォード大学のCSLI(言語情報研究所)である。ここでは、Neil Scottを始め、障害者のアクセシビリティを高めるためのシステム、TAS(Total Access System)を研究中である。これは、自分に合わせた支援技術を仕込んだPCをアクセッサーとし、それをさまざまな種類のターゲットホストにつなぐことで、障害者が、MACやPC,UNIXなど、何でも使えるようにするシステムである。CSLIではこれを数年前から研究していたが、PCの高度化により次第に現実味を帯びてきている。これまではPCが中心であり、実際の線でつないでいたが、今後は赤外線による接続が実現したり、家電製品をつなぐ試作機が出ることなどにより、ユニバーサルな端末としての価値が増してきている。将来的にはWearableコンピューターに実装して、KIOSKや券売機、自販機や家電などをすべて手許でコントロールできるかもしれない。

竹内さんが説明してくれた今回は大人数であったため、正式なプレゼンをお願いできることになった。日本語で沖電気の竹内さんが説明してくれたため、助かった参加者も多かったと思う。ここで、わたしは久しぶりに合田さんに会えた。彼はかつてCSLIの特別研究員として2年ほど滞在していたとき、お世話になっていたのである。日本に帰国されてから、しばらく会っていなかった。ほぼ1年ぶりである。彼のような優秀な障害者がもっと日本で仕事があるといいのにと、ずっと思っていたが、今はスタンフォードと日本をつなぐ仕事をしているようで、嬉しかった。

スタンフォードのモールで昼食を取り、わたしは2枚ほど急いで洋服を買いこんだ。やれやれ、今回は本当にお買い物をしている時間が少ない。リーボックのスニーカーを買いたかったけどこれは次回までお預けかな?

<Sun Micro Systems>

イサム君と同僚のチェンさん午後2時にSun Micro Systemsの本社に向かう。ここで、イサムさんという脳性まひの方とその同僚に会う予定なのだ。彼はコンピューターを専攻したかったのだが日本の大学では実験ができないという理由で受け入れてもらえず、社会系学部をを卒業した後、単身渡米しバークレーのコンピューターサイエンスをトップ10の成績で卒業したという逸材である。Sunにおいても、別に障害者関係の仕事をしているわけではなくJAVAのプログラマーとして処遇されている。同僚の話のなかでも、彼がいかに障害をExcuseに使わないかが強調されていた。会社の前で同僚のスザーノさんと「1時間考えて10分でコーディングしても、彼のように10分で考えて1時間かけて入力しても、結果は同じ1時間10分のアウトプットだ。もし彼の入力をもっと早めることができれば、彼のパフォーマンスは普通のプログラマーの何倍にもなるんだ」。電動車椅子を高速で乗りこなし、発話障害を気力でカバーするイサムの生き方に、障害とか非障害ということを越えて、人間の能力について感じる参加者も多かったと思われる。
帰りのバスの中では、わたし自身、けっこう落ち込んだ。「わたしは、いつだってBeyond Expectationってお客様に言われるような仕事のしかたをしてきたかなあ。自信ない。」なんとなく、帰りのバスはみんな無口だった。本当に能力のある人を見た後は、人間は自分と引き比べて考えるものなのかもしれない。

夜は中華街へ繰り出した。一つの皿が結構巨大で、最後はかなり大変だった。でも安くておいしかった。やっぱり世界中に中国人が存在してくれてよかったと思う瞬間である。


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