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2006年CSUNツアーレポート:関根千佳(4)

3月21日その2 オレンジ郡のGOCを訪問

午後はGOC(Goodwill of Orange County)への視察だ。ここは、障害者雇用を推進している全米団体が、オレンジ郡に置いているオフィスと工場である。とにかく広い。最初にビデオで活動内容の紹介があった。各企業からもファンドを受けて、障害者雇用を進めるため、不用品の回収、修理、販売などを始め、ITリテラシーの向上、AT(Assistive Technology:支援技術)の各人への適用、ジョブコーチの派遣などを行っている。ATラボはあまり大きくないというので、最初から申し込んであった20名だけが見学に行った。 写真:厖大な量と種類のキーボードから最適なものを「選ぶ」説明してくれたアジア系のStanleyは、ATに非常に詳しく、CSUNでも常連だという。
アメリカのATセンターらしく、「製品」がたくさん並んでいる。日本ではスイッチや機器を「手作り」するところからATの勉強は始まるが、アメリカではまず、機器を揃える。AT担当者に必要なのは、その機器を「フィッティング」することなのだ。個々の機能を知り、それぞれの人の障害を見極め、最適な解を適用する。だから、ATセンターには、たくさんのキーボードやスイッチ、代替入力装置が並ぶことになる!
ソフトウェアも、学習障害用、単語予測など、さまざまなATツールが整然と並び、顧客が来るのを待っている。隣にはもっと小さなこどものための施設もあり、アットホームな雰囲気で羨ましかった。
写真:音声認識&単語予測のソフトオレンジカウンティのこの施設は、ATやITの支援で有名な場所なのだが、やはり一般の障害者や企業へのコンサルだけでは職員の給与はまかなえていないということで、玄関にも各社のドネーション(寄付)へのお礼が掲げられていた。海外では企業も個人も、利益から地域のNPOにドネーションを行うのは当然の行為であり、減税の対象でもある。かつてLAに住んだとき、税金の計算を依頼した会計士は、「このくらいの年収ならこの程度のドネーションをしているのが普通ですから」と、ばさっと控除してくれた。驚くと同時にそれほど出していなかったことが恥ずかしかった。翌年は見合った金額をあちこちに寄付したのは言うまでもない。個人のお金も、税金として自治体に払う替わりに、自ら選んで「公共」に還元、還流する。全てを税金で「官」が行うのではなく、自分たちで「公」を支援する。日本でもNPOへの税額控除が、個人ベースでも進めばいいのだが。ただこれも米国内でM&Aが進み、昨年まで出してくれていた2社が合併したので大変、という話もGOCからあった。企業のM&Aがこんなところにまで影響を及ぼすのだと実感する。
この日の夜は、オープニングレセプション。昨年きちんと挨拶できなかったMaryAnnに、前の前の所長であるHarry Murphyからきちんと紹介してもらう。Harryとは1993年以来のつながりである。CSUNのこの会議には、CSUNのFounderとして、いつも顔を出している。彼の姿がみえないとやっぱり寂しいので、生きている限り来てほしいものだ。「いつか、僕のサンフランシスコの家に遊びに来てね、歓迎するから」って言ってくれた。ほんとにいつか行こうかな。海の見えるきれいなところで引退生活を送るのは、アメリカ人の理想の老後だ。そこで自叙伝でも書くのだろう。
会場には、アメリカの、いや世界のATをひっぱっているお歴々が顔を揃えている。こんなにたくさんのキーマンにいっぺんに会えるのは、この場だけだなあと実感する。日本の方も本当に多い。我がUDITツアーチームもたくさん参加している。日本では会えないけど、ここに来たら会えるねという人もたくさんいる。たくさんの人に会おう。ITがどんなに進んでも、直接会うことの価値は変わらない。その人の持つオーラは、ネットだけでは見えないものだ。私は各地の大学の講義で、尊敬するNTT HITセンターの初代所長、遠藤隆也氏の言葉を引用して、「Origin に会え、Originになれ。」と締めくくることが多い。世界の潮流を作り出した人に会い、いつか、その人自身が、新しい潮流の原点になる。このツアーから、そんな流れをいくつも作り出すことが理想なのだ。たまたま一緒になったテーブルで新しい海外の友達もできた。おしゃべりはつきなかった。


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