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2006年CSUNツアーレポート:関根千佳(7)

3月23日 その1 アメリカのアクセシビリティの動向

写真:マリオットホテルの威容。視覚系のデモはこちらが多い今日もセッション全開である。8時からのJudy Brewerの講演は聞き逃したが、その直後の「ICTアクセシビリティにおける国際協力」というパネルディスカッションでは、彼女も、また、日本からは渡辺先生も出ていたので、大変にラッキーであった。WCAG2.0 がやっと見え始めてきているし、JTC1でWebアクセシビリティをISOに提案しているという現状を、なんとか国際的に進めていけるよう、状況を説明し、支援を求めるものであった。パネルだったので、渡辺先生以外は資料もなかったが、各国の状況が語られ、友好的な雰囲気で話は進められた。もとより、WebアクセシビリティをISOにしていくことに、異論はない。日本のように508条の存在しない、JIS規格だけしかない国では、ISOになっているというのは、実効性を高める上で有効である。反対する理由は全くない。だが、このセッションが、米国のIT業界団体であるITIの主催であることが、私にはほんのすこし、ひっかかるものがあった。かつて、508条を業界の立場から、いや、正確にいえば、米国の産業界としての立場から、推進した団体である。会場にITIのS氏がいた。相変わらず、瞳が美しい。「いやあ、僕も年をとったよ」そういいながら、目は優しげに笑う。数年前もそうだった。だが、たぶん、508条の立場も、ITIのスタンスも、変わってしまったに違いない。米国においても、日本でも。これからどうなるのだろう。

次は、「アクセシブルなプレゼンテーションを作る」というセッションに出た。パワーポイントのファイルは、正しく作ればスクリーンリーダーで読めないことはないのだが、確かに画像の上にテキストボックスを付けたりすると、全く読めなくなってしまう。アクセシビリティを確保するのが大変なソフトなのだ。で、それをカバーして、かつパワーポイントと互換性もあるツールは、こんなにたくさんあるのだ!と教えてくれる会だった。うーむ、日本ではどうなのだろう。帰国したらちょっとこのエリア、調べてみようと思った。MSのH氏も会場にいたので聞いてみる。「ねえ、MSとしては今の発表、どう思う?」「うむ、ユーザーが勝手につけるテキストボックスまではアクセシビリティの確保はできないからねえ、仕方ないところもあるなあ」「で、日本では同じような製品ってでているの?」「僕は知らないよ。競合になるし」そりゃそうだ。でもたぶん日本でもニーズはあるんだろうな。
少なくとも、「アクセシブルなパワーポイントの作り方」という手法の検討と公開は、日本でも進めるべきだろう。競合があってもなくても、だ。


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