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スローなユビキタスライフ感想文

公文 俊平 氏 (多摩大学 情報社会学研究所 所長)

21世紀の情報社会は、知力の増進した人々が、相互の理解と共働をもとに、さまざまな目標の実現をめざして、とりわけ自己実現をめざして、活発に活動する ようになる。その具体的な場になるのが、地域に再生するコミュニティではないか。
このようなビジョンを漠然といだく人は、少なくないだろう。だが筆者は、豊かな情感と深い愛情に溢れた一篇の物語の形で、それを生き生きと形象化してくだ さった。「天と地と人がつながるIT技術」というコンセプトもすばらしい。
「ルイカ」のようなデバイスをだれでもが日常的に使って生活している、高布町のようなコミュニティを訪問したり、そこに住んだりすることができれば、どん なにか充実した毎日がおくれるだろう。
とくに私がはたと膝を打ったのは、だれでも自由に発行できる「感謝券」のアイデアだった。地域通貨の発行権を、そのユーザーたちの間に分散させるという着 想は、真剣に追求する価値がある。「虹」に感謝券を発行するとか、訪問客が発行した感謝券を「清算」するなどといった話は、その現実性にやや首を傾げてし まうが、多分さらに練り上げていけば面白い地域通貨として実現させられそうだ。

これからが楽しみである。