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W4A2008北京レポート(5)

T.V. Raman のキーノートスピーチ

W4Aが始まった。キーノートスピーチは、T.V. Raman である。全盲で、emacspeak の開発者として知られているが、現在はGoogleの研究所ででアクセシビリティに取り組んでいる。テーマは、"Cloud Computing And Equal Access For All" (「ネットワークコンピューティングとすべての人の平等なアクセス」)である。

画像:発表する T.V. Raman氏の写真 キーノートはWebアプリケーションの話。強調されたことは、「アプリケーションのロジックとユーザーインタフェースを分離する」というメッセージだ。たと えば、Google カレンダーの例でいうと、カレンダのデータへアクセスするAPIをちゃんと整備しておくということだ。そうすることで、Webアプリケーションだろうが、 単独のアプリだろうが、UIは自由だ。そうなっていれば、視覚障害者が専用のUIを使うことだってできる。だから、ロジックとUIを分離すべき、という話 である。このRamanの主張には納得できる。Webアプリケーションは、勝手な形式でWebサーバーとデータを交換して、時としてUIに依存してその交 換フォーマットを決めているきらいがある。そうではなくて、ダイナミックなデータ交換を標準化すべしという主張は、理にかなっている。そして、それは GoogleがカレンダーやMapなどですでに先導しているスタイルだ。これは、プログラミングの世界でいえば doc/view 分離モデルのような考え方ということもできるだろう。

もちろん、キーノートではWAI-ARIAなどの重要性も強調していた。しかし、全体として感じた印象では、「もっと素晴らしい支援技術(AT)を開発す べき、そういう新しいATで効果的に使えるように、Webアプリは開発されるべき」というスタンスである。現状を追認してどうすればいいかを考えるのでは なく、未来を拓くにはどうするかということを考えているのではないかと思う。研究者らしい取り組み方だと思う。

ところで、Ramanは発表中点字を読んだりしている様子がまるでなかった。しゃべりっぱなしである。スライドは、Charles Chenが操作していた。全部覚えている。盲人にはこの手のスーパーマンがいるものだが、それにしてもすごい!

T.V. Raman (Wikipedia)
Cloud Computing And Equal Access For All (T.V. Raman)のスライド