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W4A2008北京レポート(13)

まとめ

予稿を収録したCDの配布が当日であったことと、驚くべきことにインターネットを介した口頭発表も複数あったことも重なり、まさに英語力が試される研究会 であった。特に、ネットでの発表は聞き取りづらく、また十分に理解できない発表も多かった。そのため、このレポートではごく簡単にしか紹介できなかったこ とをお詫びする。詳細は、ACMで公開される予稿や発表者などの公開している情報などをご自身で確認していただくのが一番であろう。

参加して最も感じたのは、正直に言えば発表がまだ「研究」といえないようなものを含んだレベルにあるということである。世界的に見ても、Webアクセシビ リティだけに絞り込んで研究をひとまとめにするには、研究自体が少ないということであろう。良い発表もあったけれども、CSUN などで発表済みのものもあり、目新しいものは少なかった。また、ユーザーに着目して地道に研究しているものが少なく、アイデアの紹介、製品の紹介にとどまっ ているものが多い、という印象である。別の視点でいえば、W4Aは発表する場としては悪くない。おそらく日本のすぐれた研究者の発表であれば、問題なく査 読を通過するだろうと思う。

しかし、いくつか発表全体を通してわかったこともある。まとめてみると、以下のような特徴が指摘できるだろう。

  • Mobile OK のような直接関係していないと思われていた技術と、アクセシビリティの課題を結合するという主張が見られた
  • WCAG2,0に対する認知面、認知障害面でのアプローチ不足を指摘する発表があった
  • UAの改良やコンテンツの変換技術などの重要性が語られた
  • 欧州が中心だが、アクセシビリティを数値化する、定量評価するという方向が「あたりまえ」のようにとられている

2009年は、スペイン・マドリッドで4月に開催される予定である。ちょうど、WCAG2.0 勧告が出たあとか出る直前のタイミングだ。WCAG2.0を使った、あるいはその問題を指摘する発表でレベルアップすることを期待したい。

梅垣正宏(研究員)
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