Home » レポート » ツアーレポート » 2012年度CSUNツアー » レポート:関根千佳 » 3月1日

今日は朝からセッションをはしごする。シニア向けITのセッションもあるが、パネルディスカッションは、昨年と同じメンバーだった。悪くはないのだが、昨年からあまり変化があるようには見えない。こういう、パワポのないパネルは、英語力の少ない私には、理解できるところが少なくて、どうも居心地が悪い。内容自体はシニアのICT利用がもたらすQOLの向上や社会的発言力の強化などで、各国のお国柄が出ている。

この日から、あちこちのセッションに行く。ハズレもあるが、ま、それも人生だ。

今回、もっとも嬉しかったのが、そして楽しそうだったのが、ニール・スコットのセッションである。この名前は、支援技術の関係者であれば、懐かしく思い出す人もいるかもしれない。そう、スタンフォード大学で、TAS(Total Access System)を開発していた、あのニールである。ヒューマンインターフェース系の学会でも、支援技術系の会議でも、よく参加して、発表していた。スタンフォードの中で、アクセシビリティやユニバーサルデザインのリーダーだった。日本にも何回も来ていたし、IBMで講演をお願いしたときは、我が家にも来てくれた。うちで手巻き寿司をご馳走したのを覚えている。電動車椅子のJBギャランと一緒に来てくれた。彼が居たから、私もスタンフォードを訪問できたのだし、色んなひとも紹介してもらえたのだ。ALSになったジェリー・リーバーマンの自宅にも行けたのだ。技術が人を幸せにできるという実例を、本当にたくさん紹介してくれた。日本のAT やUDの発展にも、とっても貢献してくれた大恩人である。でも、引退してハワイに行ってからは、連絡を取って居なかった。元気だとは聞いていたのだが。 

で、CSUNの発表スケジュールに、彼の名前を見つけたときは、本当に嬉しかった。かつて、毎年、どこかで会っていた人に、久しぶりで会えるのだもの。

久しぶりに会ったニール・スコットこのセッション、最初から雰囲気が全く違っていた。大学の研究発表らしくなかったし、企業の情報提供っぽくもなかったのだ。部屋に入ると、アロハ!と迎えてくれる。みんな、花のレイをつけている。おお、ハワイだ。そして、会場の参加者の大半が、一般の人なのである。障害を持つ子供達、シニア、若者、その家族だ。なんて、アットホームな雰囲気なんだろう。

発表は、その当事者たちが、順番に行っていく。ニールは、その司会者の役割だ。相変わらずの満面の笑みで、子どもたちや当事者の話を進行していく。インターネット経由でマニュファクチャー装置を遠隔操作し、それによって木工やレーザー加工を行って、障害者が美しいハワイのデザインで製品を作っていくというプロジェクトだ。日本で言えば、作業所の仕事遠隔で生まれる美しい家具を、ネットと機械加工を組み合わせて、付加価値を増したという雰囲気である。で、出来上がったものは大変美しい。そうだよなあ、別にネットでの仕事って、プログラミングとかだけじゃないよね。旋盤だってマニピュレーターだって、ITで遠隔操作できるんだから、いったん作業を覚えてしまえば、自宅からだってできる仕事はあるだろう。子供たちの活き活きした笑顔、家族の楽しそうな雰囲気、そして出来上がる製品群の美しさ。なんだか、理想の老後を過ごしているらしい、ニールの笑顔が印象的だった。技術者冥利に尽きるというのは、こういった生き方なのかもしれない。ジェロンの観点からも、羨ましかった。


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