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6月15日 プレコンファレンス会議出席2日目

午前中はPreconferenceが続く。わたしはJames MullerとMolly Storyの「ものの使い勝手を考える」セッションに参加した。製品評価にはあらゆる人々の参加と意見交換が必要、という説明で見せられた表にはうなってしまった。5歳から70代までを年齢で10グループほどに分け、そのおのおのに重度肢体不自由、軽度肢体不自由、視覚、聴覚、認知等の各種障害を最低1名と、障害を持たないメンバー3〜4名を集めて、各人に評価してもらうというのだ。年齢と障害によって、たしかに受け取り方は違うので、これは大切なデータだと思うが、実際、自分がやろうと思うと、このマトリックスを埋める人材を探すだけでも大変だと思った。各種の障害者と、かなりの高齢者で構成される、わがユーディットでさえそうなのだから、ネットワークを持たない日本の一般企業にとっては、不可能にさえ見えるだろう。しかし、現実にJimやMollyはそれをやっているという。さまざまな製品を送り、生活の中で使ってもらい、3週間から3ヶ月かけてその意見を集めている。途中では電話をかけ、郵便を送り、と、大変な手間をかけているらしい。ユニバーサルな製品を作り出すためには、このような地道な努力が必要であり、かつ、さまざまな障害への深い理解と当事者の意見を聞くことが最善の道であることを再確認した。

このセッションは、製品評価の楽しいワークショップでもあった。瓶のオープナー、シャワーヘッド、皮むき機(大量のにんじんを持ちこんでいた!)、時計、歯ブラシといった、あらゆる雑貨が2個以上持ちこまれ、それの使い勝手を評価するのである。さまざまな雑貨類で使い勝手の比較の写真詳細なシートが準備されており、わたしは質問項目の英語を読むうちに時間がきてしまって十分に書けなかった。しかし、たしかに「比べてみると…・」ずいぶん製品の使い勝手は違うのだとわかった。ふだん、何気なく使っている製品も、「ユニバーサルだと思いますか?」と聞かれながら使うといろんな問題点が見えてくる。この歯ブラシ、左利きだったら使えるかな?この瓶オープナー、子供には危なくないかしら?etc,etc...視覚障害を持つ人(ターゲットは主に弱視の子供と思われる)が時間を知るための時計、トーキングクロックは、たしかに押すと時間を声で知らせてくれるが、実際に時刻合わせをしたり、目覚ましをセットしたりするのは、ボタンも液晶も小さくて使いにくい。家族だけでなく、本人ももし一人暮らしをしていたら使えないかもしれない。高齢者にもいい製品なのに、実際に設定ができなければあまり意味がない。しかし、障害者支援技術として作られたこのような製品に、もう少し健常者や周囲も「一緒に使える」という発想を入れたら、きっとユニバーサルな製品になるのだということが理解できた。こんなワークショップ、日本でもやってみたいな。

CASTそして日立の本宮さんとの写真CASTのメンバーとLunch。
彼等は遠隔教育のUDを進めているNPOだ。Webアクセシビリティ関係者にはよく知られたチェッカーソフト、Bobbyの開発チームでもある。
午後から本会議。川内さんの歯切れのいいセッションを聞く。車椅子マークのいっぱい付いたエレベーターのサインに、会場がどっと沸いた。パネルディスカッションと違って、わかりやすくて嬉しかった。

素敵なギャラリーを堀川さんとの写真夜はギャラリーナイトへ行く。
ソニーの堀川さんが調べてくれたもので、なんと第3木曜の夜だけ、Providence内の美術館やギャラリーが無料で入館できる上に、巡回バスがタダ、という素敵なイベントだ。わたしはRISD(Rhode Island School of Design)の美術館に感動した。小さいが、実に趣味のいいコレクションである。ハープとフルートのコンサートまであった。ここの演奏者も、ミュージアムショップの売り子さんも、みな、70歳は優に超えていると思われる、素敵な高齢者である。市民社会の中で、高齢者が実にエレガントにその役割を果たしていて、なんだか羨ましかった。日本もかつてはそうであったし、地方や伝統文化の分野では今もそうなのだろうけれど。。。

古瀬先生、Jim Sandueと参加者の写真