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質疑応答

  1. バリアフリーとは物理的なバリアだけなのか。
  2. バリアフリーの概念は外来のものか、それとも日本独自のものなのか。
  3. ユニバーサル・デザインという言葉は建築の分野で使われているのか。
  4. 起業という側面では非常に脚光を浴びているが、SOHOはどの程度の影響力をもつようになるのか
  5. SOHOの人口、企業に勤める人口の両方の比率は分かるのか。関根さんの会社に登録している契約社員はどのような位置づけになるのか。
  6. 法人登録していれば統計をとるのは簡単であるが、自営の統計はとりにくいのではないか。
  7. SOHOは社会の動向と深く係わるのではないか。家の方が快適という感覚や、家で仕事をすることに対する男女の意識格差などを考えた場合、SOHO人口の男女比はどのくらいなのか。世の中が発展していかないと、変わっていかないのではないか。
  8. SOHOを決意する年代とは何歳くらいか。
  9. 日本の住宅事情や、子どもがいるといった家庭環境などを考えると、スモール・オフィスの方が適しているのではないか。
  10. 定年後、シルバーになってから出来る仕事なのかなと思うが。
  11. 仕事の中身にもよるが、一般の人にとっては難しいのではないか。
  12. ここでいうSOHOは、テレワークという概念と、基本的にリンクしているのか。
  13. テレワークという概念と、ホーム・オフィス的な概念とは、全く別の系統の概念から来ているものではないか。
  14. 今の状況ではホーム・オフィスは難しいのではないか。
  15. 昔はバーチャル・カンパニーなどはなく、バーチャル・カンパニーの一員ということもなかった。内職は基本的に一人であった。
  16. 情報は取れても、仕事は取れないのではないか。
  17. どういう分野で専門性を持てばよいのか。
  18. 成功するという目安に達することのできる人が、どの程度いるのかというのが、社会的なインパクトを与えるという意味でポイントとなろう。
  19. ユニバーサル・デザインとは、情報の伝達のユニバーサル・デザインなのか。
  20. 情報コンテンツのなかにも、ユニバーサル・デザインはあるのか。

Q. バリアフリーとは物理的なバリアだけなのか。
A. 全盲の人は、そのままではインターネットから情報をとれない。情報そのものがバリアをもっているわけではないのだが、パソコンのハード・ソフトが視覚障害者に使えるようにできていないという物理的バリアWebのコンテンツの作り方というサービスのバリア、また、パソコンそのものの教育を受けにいくという制度のバリアなどが組み合わさって情報バリアができてしまうのである。

Q. バリアフリーの概念は外来のものか、それとも日本独自のものなのか。
A. 海外の方が、日本より10年くらい先を行っているので、おそらくこの概念は外来のものであろう。日本でも、バリアフリーを規格している岩下さんという全盲の毎日新聞社の記者は、ごく普通に仕事をされている。今は、サイバースペース編集部に所属している。彼は、もともと点字毎日の記者をしていて、そこで2年間アメリカに留学した。その後毎日新聞の本体に戻り、今では、パソコンとインターネットとデジカメ、そしてテープレコーダを併用しながら仕事を行っている。
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Q. ユニバーサル・デザインという言葉は建築の分野で使われているのか。
A. 今、建築の世界ではホットな話題である。建設省の建築研究所の、古瀬さんたちと共に、先日5日間、ユニバーサル・デザインの国際ワークショップを開催した。これは、科技庁がファンドし、建設省が主催した。現在、建設省のなかでは、ハートビルフォア?をはじめとして、最初からユニバーサル・デザインの考え方を入れて、公園や駅などをはじめ公共施設や住宅などを全部変えていこうという方向に、意識がどんどん変わってきている。古瀬さんの書かれた本には、『バリアフリーからユニバーサル・デザインへ』というのがある。これには、建築業界における意識の変革が表われている。

Q. 起業という側面では非常に脚光を浴びているが、21世紀の日本経済のなかで、SOHOはどの程度の影響力をもつようになるのか。
A. GDPの何%かを占め、徐々に増えていくと思うし、増えていって欲しいと思っている。
A(事務局). 5年前にテレワークセンターを山形県につくり、そこでモンゴル語の翻訳の仕事を行うようにした。モンゴルに仕事を発注し、それをテレワークセンターが仲介するというかたちで業務を始めた。翻訳という単純な作業なら、電気通信回線さえあれば、必ずしも日本で仲介する必要はなく、極端な話、日本語さえできれば、インドやシンガポールなど世界どこでも作業ができることになる。結局、このような仕事は、日本から、仕事が流出する仕組みであるということが分かった。
しかし、現在ではSOHOが仕事として成り立っている。その要因は、都心と何らかのつながりをもっていることである。このコネを生かし、かつ、いろんな情報を取りながら、より付加価値の高い仕事を行うことで、SOHOが成り立つようになってきたといえる。
A(関根). 公文先生がよく「知業」と言われるが、ノウハウをネット上に載せて、それを販売できるようになっていけば、日本の中で集約されつつあるノウハウを、ワールドワイドなビジネスのなかできちんと位置づけて、それを追加していくことができる。例えば、IBMでは、一つの仕事を行うに際し、最初のコンセプトはアメリカで作っても、基本的な設計は日本で行い、最終的なコーディングはインドのバンガロールやイスラエルで行うという、ワールドワイドなかたちで仕事を進めている。日本であろうと、ここが強いというエリアがあれば、仕事は確実に回ってくるのである。強いエリアが完全に無くなってしまえばどうなるか分からない。いずれにせよ、今後、どうやって日本がこの部分をもっていくのかということが重要になる。

Q. SOHOの人口、企業に勤める人口の両方の比率は分かるのか。関根さんは社長として法人登録をしているが、関根さんの会社に登録している契約社員はどのような位置づけになるのか。
A. 契約社員は自営業者が多い。SOHOの場合、最初は自営でやっているが、次第に規模が大きくなっていくと有限や株式にしていくことが多い。マイクロソフトやネットスケープも元々は自営であった。

Q. 法人登録していれば統計をとるのは簡単であるが、自営の統計はとりにくいのではないか。
A(事務局). あくまで推計ですが、リクルート・リサーチがデータを出してきているので、後日紹介したい。
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Q. SOHOは社会の動向と深く係わるのではないか。家の方が快適という感覚や、家で仕事をすることに対する男女の意識格差などを考えた場合、SOHO人口の男女比はどのくらいなのか。世の中が発展していかないと、変わっていかないのではないか。
A. 今、仕事でお付き合いをしている人たちをみると、7割が男性で残りの3割が女性である。子育てのために仕方なく仕事を辞めたというSE経験のある主婦は、世の中にごろごろしている。下の子どもが幼稚園を卒業したら、また仕事を始めたいと考えている人たちはたくさんいる。そういった方が、SOHOとして仕事をしていくケースは今後増えていくのではないか。
Q. SOHOを決意する年代とは何歳くらいか。
A. 私の友人たちではだいたい30代半ばくらいである。しかし今は、中高年の起業熱も高いので広がるだろう。

Q. 関根さんのお話を伺っているとホーム・オフィスは難しいのではと感じている。日本の住宅事情や、子どもがいるといった家庭環境など、また、結局仕事を始める以前に家庭以外のところに接点を設けていないといけないということを考えると、スモール・オフィスの方が適しているのではないか。
A. 都内でなければ、ホーム・オフィスの方がよいと思う。都心にいると、東京の都心に通っている近郊の人間の発想だけで物事を決める傾向が強い。地方では、大きな家に暮らしている人も多い。従って、子どもが巣立っていった50代の主婦が、自分の持っているノウハウを生かしながら、またパソコン教室に通ってWebクリエーターやマイクロソフト・オフィシャルトレーナーの資格を取って仕事を始めるようになれば、だいぶ社会も変わっていくのではないかと思う。今多いのが、60代で起業する人である。会社の中では自分のやりたい仕事をやってしまったので、50代の後半に企業を辞めて、数年間勉強した後、60代になってベンチャーでSOHOを始めるという人が増えている。
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Q. むしろ30〜40代よりも、50〜60代になって、家に空間ができて、ネットワーク上で仕事をする環境が整うということになると、定年後、シルバーになってから出来る仕事なのかなと思うが。
A. 確かに、アメリカのスタンフォードのように大学を出てすぐにSOHOをというケースは、日本ではあまり勧めたくない。一回は企業に入って、組織の中で揉まれることを勧める。そうしないと、仕事のやり方を会得しない。日本では、ます仕事で顔を合わせ、名刺交換から始まる。こうして初めて信頼ができて、次の仕事につながる。このような商慣習のあるところでは、20代で学生のまま起業してしまった連中は、あまり長続きしているケースは少ない。20〜30代は、まず会社の中で下積みの苦労をしなさいと言っている。

Q. IBMの先端で仕事をされてきて、そのエリアにおける最先端の情報をもっている。だから、SOHOを起こしても、意欲的に楽しくやっていけるのではないか。例えば、子育てのために10年間ブランクがあった場合、その間情報の先端に接していないために、同じような仕事に復帰するといっても、仕事の中身にもよるが、一般の人にとっては難しいのではないか。
A. 記者は、スモール・オフィスを実践している職種であるといえる。クラブには、ブースもあり、ネットワークのアクセスのあるところで仕事をしている。スモール・オフィスは、日常体験して分かっているが、これがホーム・オフィスとなると、そこでいろんなギャップが出てくるのではないか。
A(事務局). 意外とできるのではないか。私の奥さんも専業主婦に飽きたといって、関根さんほどにはいかないにしても、結構仕事が入ってきている(A(関根). それは、普段、あなたが情報を入れているからである。)。

Q. ここでいうSOHOは、テレワークという概念と、基本的にリンクしているのか。
A. よく議論になる点であるが、テレワークという概念が入らないと、今のSOHOは成り立たない。
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Q. ホーム・オフィスの概念は、日本語でいうところの、内職である。この概念は、昔からある。これには、全国ネットや国際ネットなどは必要なく、地域の小さな集落とか町とか中小都市などでは、既に家庭の奥さんの間で行われていることである。それが、ネットワークの普及によって、その内職の領域が広がった、あるいは職種が広がったということに過ぎないのではないか。従来の内職が、ネットワークという概念の結びついて、たまたまSOHOという言葉になっただけで、元々の部分では、テレワークという概念と、ホーム・オフィス的な概念とは、全く別の系統の概念から来ているものではないか。
A. 定義的には曖昧で、実は何を指しているのか明確でない。

Q. ここで議論しているSOHOは、あくまで新たなネットワーク上におけるSOHOという概念であり、従来型の内職的な意識の延長線上で考えると、話が全く違ってくる。そこのところが、今、ごっちゃになりながら、議論が進められてきているので、話が見えにくくなっている。内職的なSOHOができる人はたくさんいると思うが、ネットワーク上のSOHOということになると、ごく普通の家庭の奥さんや、ごく普通の退職した人など、こうした世代の人たちの中でできる人は限られているのではないか。また、家庭内に小さな子どもがいるとか、家のスペースが狭いとかなど、ネットワークを使いこなせる能力を別にしても、今の状況ではホーム・オフィスは難しいのではないか。
A. アメリカでは1970年代から始まり、80年代、90年代に伸びていったが、80年代は子どもをみながら女性が働ける、90年代は、車の排ガスを減らすという環境への配慮といった理由からSOHOが伸びていった。このように、アメリカでは元々ホーム・オフィスであった。子どもの世話との両立を目的とした、家庭における仕事、つまり、パワー・ハウスの意味合いが強かった。
この点からすると、内職の系統をひいていることになる。

Q. でも、昔はバーチャル・カンパニーなどはなく、バーチャル・カンパニーの一員ということもなかった。内職は基本的に一人であった。
A. 単に、ネットワークによって広がっただけである。内職的な流れからすると、地域には元締めがいて、手広く商いをする者もいれば、専門職的な者など、いろんな職種や職人がいた。それが、この数年の間にネットワークやパソコンが普及したので、従来の内職が、SOHO的なモノの考え方と結びついて、今の状況に至ったのではないか。
そこで質的な変革が起こったのは、昔は末端の人には情報が入らなかった。末端は、あくまで下請けであった。今は、末端であっても、ネットワークを通じていろんなところに入っていくことができるという点では、個人事業者であっても、下請けではない。従って、元請けに頼る必要がなく、自分で仕事を取ることができる。
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Q. でも、情報は取れても、仕事は取れないのではないか。元請けのような、プロジェクト・リーダーのようなものが機能しないと、永続的な仕事にはならない。
A. そんなことはない。部下と同じであって、しばらくそこで仕事をすると、次第にノウハウが身につき、やがて自分がプロジェクト・リーダーになることができる。

Q. SOHOを行う際に必要とされるものに、専門性とあるが、どういう分野で専門性を持てばよいのか。
A. 例えば頚椎損傷者などの障害者や高齢者など、自分の障害について非常に詳しく知っていれば、その人は障害者のなかでも、先生になれる。主婦でも同じである。例えば、予備校の情報に長けていればそれはとても価値がある。要するに、企業内での知識だけが、専門性の全てではないということだ。その人しか持っていない情報は充分に専門的なのである。

Q. 成功するという目安に達することのできる人が、どの程度いるのかというのが、社会的なインパクトを与えるという意味でポイントとなろう。
A. マイクロソフトも、元々はSOHOであったことを鑑みると、日本でも、そのうち、大企業を食ってくるようなSOHOも現れてくるのではないか。
一個人が成功するという可能性はたくさんあるだろう。社会において、SOHOが市場として認知されるに至るのかどうか、それに公的機関がコミットメントできるかどうかという問題になっていくであろう。
公的機関は、是非、その振興を図るべきである。

Q. ユニバーサル・デザインとは、情報の伝達のユニバーサル・デザインなのか。
A. 情報通信のユニバーサル・デザインである。

Q. 情報コンテンツのなかにも、ユニバーサル・デザインはあるのか。
A. それも一つである。WWWの標準のなかで、決めようとしているいろいろなガイドラインがある。障害者が利用できるようなWeb規定を、世界でのWWW標準化委員会で取り決めをしている。また、郵政省の通信政策局の委員会でも、Web規定を日本でも今後どうしていくべきかということで議論している。

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