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2008年シリコンバレーとCSUNツアーレポート:関根千佳(8)

3月13日(その1)アクセシビリティをめぐる世界の動向

今日は法律や制度の話が続く。Judy BrewerのWAIの進捗度合いを示すセッションは、ほぼ満席になった。最新状況を、判りやすく説明してくれる。ビギナー向けなのであまり専門的ではな いが、それでも、WCAG2.0の状況がどうなっているか、世界各国との連携の状況がどうなっているか、モバイルWebへの対処などを伝えてくれた。よう やくWCAG2.0も今年こそ世に出るだろう。何年もかかったものだなあ。
508条との兼ね合いでWAIもいろいろ大変だったと思うが、なんとか先へ駒を進めてほしいと思う。Judyが、どんどん柔らかい印象になってきているの に気づく。そのシャープな頭脳と卓越したリーダーシップで、世界をリードしてきた彼女が、苦労の末に辿り着いた境地なのだろうか。

TAITACが主催した508条と255条のアップデイトも、ほぼ満員だった。508条も2001年に施行されて以来、調達側と当事者側から、いくつかの 指摘がなされてきた。今回、そのような声を踏まえ、時代の流れを見据えて、見直しをしているのである。日本からは東洋大の山田先生もこの委員会に参加して いる。(最初、TAITACからこの参加の許可がなかなか降りず、私はリンツでMike Pacielloに会ったとき、彼から直訴してもらったのだ。感謝)
今回の修正の目玉は、Testabilityの確保、調達時のみならず使用中にもアクセシビリティを確保すること、Web上のアプリケーションへの配慮、 モバイル機器への配慮といった点だろうか。ユビキタス情報社会への布石だろう。いくつかの国内規格が、ISOやITUに提案されている事態を受け、米国内 でも意識が高まっているようだ。Webやソフトは、「User Interface and Electronic Contents」という大きなくくりになるという。電子ペーパーやモバイル環境なども全て含まれるので、正しい方向性だろう。また、これまで「製品カテ ゴリー」で分類していたがこれを「製品のキャラ(!性格とすべきか、機能とすべきか・・)」で分類する方向性を打ち出した。例示すれば「電話システム」で はなく「リアルタイム音声変換機能」として示すということだ。
前述の「User Interface and Electronic Contents」も、ソフトウェアだ、Webだ、マルチメディアだっていうわけ方そのものが、もう意味をなさないことを示している。一つの情報を、端末 により人により、状況により場所により、IOも全てフレクシブルに、コンテキストアウェアでダイナミックに編集して出してほしいというユビキタスワールド においては、製品カテゴリーは意味を持たない。このあたり、弊社で昨年出した、Beyond the Horizen を参照していただきたい。ユビキタス情報社会における、アクセシビリティの将来の方向性が見えるはずである。508条改正の主要メンバーがこのレポートを書いており、今回の改正の意図がよくわかるだろう。
EUのInmaも、相変わらず元気に発表してくれた。EUのMandate376は、まもなく最終段階を迎える。アメリカの508条とともに、世界の流れ は、アクセシビリティを当然のこと、国家を超えた価値として、推進していこうとしている。EUが2010年までの戦略計画として挙げている4つの柱を紹介 しておこう。

  1. EU全体で差別禁止法の制定を推進
  2. 障害者問題をメインストリーム化
  3. アクセシビリティの推進
  4. 対話を通じた当事者参画

どれも、当事者の意見を抜きにしては、何も決めないという決意の現れであり、ユニバーサルデザインの社会を作る上で大切なことだ。この流れは、 おそらくアジア各国にも発展途上国にも支持されていくだろう。日本も、内閣府で10年計画を作っているが、どうもこういった各国の方針をきちんと見て作っ ているという気がしない。世界の孤児にならないためにも、日本政府や省庁の内なる国際化を進めてほしいものである。


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