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2008年シリコンバレーとCSUNツアーレポート:関根千佳(9)

3月13日(その2)ハンディキャップの終焉??

この日のランチョンセミナーは、予約しないと入れないもので、Ray Kurzweil氏の「ハンディキャップの終焉」という過激な題であった。視覚障害者向け支援技術のエンジニアとして、カーツワイル社の創業者として、ベストセラー作家として、多彩な顔を持つレイ・カーツワイル氏は、当然ながら、ハンディキャップという言葉が、すでに業界では、使ってはいけない差別用語?であることも知っている。
で、彼の話は、その題名どおり、結構過激であった。今後のユビキタス情報社会の中では、障害者こそが、最強の人種?になるかもというのである。だって、AT(支援技術)が進み、極小化すればするほど、障害者の生活は進化するからだ。脳科学も進化する。遺伝子レベルでの進化が進めば、障害者は今よりもできることが劇的に増えていく。むしろ、その進み方は、障害をもっていない人よりも、早いかもしれない。
画像:コンピュータも消える・・・まあ、確かに、目が見えていれば、見えてくる画像を人工網膜に直接投影しようなんて思わない。でも、もし正確な投影ができれば、それをOCRに読み取って、瞬時に多言語化することは可能なのだから、もしかしたら視覚障害者のほうが簡単にマルチリンガル環境に進めるのかもしれない。2010年にコンピュータは完全に消えてしまい、ユビキタスで常時接続のネット環境になったとき、その完全なVRの世界、いや、Augmented Real Realityと彼が呼ぶ世界では、障害者こそ先に技術の進化の恩恵を受けるという。

遺伝子治療など医学も進歩し、人が150歳まで生きる未来では、加齢や障害による社会的不利「Handicap」は、2010年には消滅するというのが、この題名の真意であった。私自身は、150歳まで生きたいとは思わないが、ATが医学の進歩と同調して進めば、全く新しい視野でものを考えることができそうな気がする。医学用語が多すぎて、ちんぷんかんぷんのところも多かったが、参加者は拍手喝さいだった。
ランチは、ローストビーフかターキー、ベジタリアンが選べるサンドイッチで、結構美味しかった。昨年の特別講演者、義手のジョン・ケンプ氏、IBMの全盲の研究者リック、そしてNECの藤井さんと一緒のテーブルで食べた。
画像:ランチョンセミナーで同じテーブルの皆さん派手なばりばり義手の彼と全盲のリックが握手をする場面は面白かった。びっくりしないよう、きちんと口頭で説明してから金属の手を出すのだ(シザーハンズみたいだもんね)。自分の障害以外の障害者と、普段ふれあっているゆえの、配慮が行きとどいている。
画像:MaryAnnとイケメンの息子さん夜はインターナショナルレセプション。昨年と違い、IBMがファンドしてくれたため、子海外からの参加者だけでなく全発表者も招待されており、大変にぎやかだ。食べるものもそれなりにあって、ワインも飲み放題。MaryAnnの素敵な息子さんにも紹介してもらう。

後半は、「日本はどう?」と声をかけてくれたKen Saleatと、つい話し込んでしまった。 日本では、企業のUD理解は進んでいるし自治体も温度差はあっても進展している。だが、社会全体の意識が、どうしても古い障害者観から抜け出せない。教育・雇用の分離政策がその根本原因とわかっているし、ようやく変化のきざしもみえてきたが、30年以上のこの意識の遅れを、どうやってキャッチアップすればいいのか・・・。日本で相談できる相手がいないため、ずっともんもんとしている思いを、なんとなくKenにはぶちまけてしまう。ま、彼だって回答があるわけではないんだけど、じっと聴いてくれる数少ない友人なのである。
実際、UDを進める中で感じる孤独感は、言葉にするのが難しい。こうやって海外に来ていると、あまりにもUDが当たり前なので、日本は遅れているなあと孤独になる。でも、日本に帰って、こうしましょうよと、いろんな委員会で発言すると、そんなこと日本では無理と言われて、また孤独になる。どっちの世界でも浦島太郎なのだ。寂しいなあ。


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