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3月10日 (その1) ロンドンからニューヨークへ

今日はニューヨークへ向かう日だ。もっと寝ようと思っていたのに、結局2時半に眼がさめた。手紙を書いたりしてすごす。6時半にホテルの車を予約してあったのでそれでヒースロー空港へ向かう。途中までご機嫌にパキスタン人の運転手と話していたが、15分ほど走ったころ、突然私は思い出す。
「チケットをセキュリティボックスに忘れてきた!」大慌てで車を戻してもらった。ホテルマンは十分時間があると言ってくれたが、気が気ではなかった。成田では2時間あっても足りないのが普通だからだ。でも、結局彼がただしかった。チェックイン、セキュリティチェック、どこも、厳しいのに早いのである。1時間近くあまってしまった。これならもっと寝られたのに。成田の長大な列を思い出す。どうしてあんなに時間がかかるのだろう。チェックインもバゲージクレームも、出国審査も。そういえば、出国審査って、航空会社のカウンターで終わってしまったような気がする。日本はどうしてあの部分を国の権威として残しておくのだろう。あれがなくなればかなり気が楽になるのに。

ま、中国なども長大な列だったから、あれはアジアの文化だということにしておこう。

そういえば、不正乗車などの対応は英国ではものすごく厳しそうだ。トラベラーズカードを買ってどこへでも乗り放題だった我々はフリーパスだったが、ゾーンを越えて乗車していた女性は検札にひっかかって降ろされた。かなり高い罰金を払うことになるのだそうだ。日本で視覚障害者がよくやる、最低金額の切符を買って、降りるときに清算という方式は使えないじゃないかと思ったが、キセルを阻止する上での効果は絶大だろう。要するに、フェアでないことへは厳しいのだ。これも、紳士の国の特徴だと思う。ノブレスオブリジュという言葉が頭をかすめる。高貴な者の果たす役割とでもいうのか、正義を守るためや弱者をいたわることは、騎士道の一つなのである。日本の騎士道って、こんな部分はあったのだろうか。きっと知らないだけだろう。不勉強を恥じるばかりである。でも、それが現代に生き残っているかどうかは、やはりおぼつかない気がする。

空港のカフェでやっと人心地がついて、紅茶とバゲットサンドを頼む。カマンベール、トマト、きゅうりのフィリングで、ごまの入ったパンがすごくおいしい。紅茶も大きなカップでこれもすばらしくいい香りだ。私は英国で、それほどまずいものに出会わなかった。これは単にラッキーだったのか、それとも庶民が食べるような安いものは、どこでもおいしいのか、よくわからない。Past Timeというお店がにぎわっていたので入ってみた。インドのミニアチュール、ヴィクトリア時代の絵をモチーフにしたエプロンなど、大英帝国の栄光がきらめく。ここの国の人が、紳士的なのも、誇りがあってこそなのかもしれないと思う。それにしても、きれいなものばかりで目移りしてしまう。ケースにきれいな肖像画の書いてある小さなミント菓子を買って、全部のポンドを使い終えた。

外は曇りだったが、しばらく飛んだら晴れてきた。田園地帯の上を行く。アイルランドだ。美しい島の端を超える。雪を頂いた山が見える。ここはヨーロッパの最西端?イベリア半島があるから違うかもしれないけれど、端の灯台に感慨が募る。翼よあれがヨーロッパだ、と、霧の中でつぶやいた船乗りやパイロットもいたろうなと。

それにしても、まったく日本人を見ない。ま、USに行くのも、UKに行くのも、それぞれ自国から飛ぶのが普通なのだから当然といえば当然だが、当たり前のように大西洋を行き来する欧米人の感覚を、わたしたちはなかなか理解できないかもしれないと思った。わたしたちが、アジアを近いと思うように、彼らにとって欧米は一衣帯水なのである。近い言語、ルーツを同じくする文化。大西洋は太平洋よりもはるかに短いと感じた瞬間だった。

しばらく、昨日もらった資料を読もう。