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国際ユニバーサルデザイン会議2002を終えて

 1年以上前から準備を進めていた国際ユニバーサルデザイン会議2002が無事に終了した。11月30日から12月4日まで、横浜のみなとみらいで開催されたもので、初日の公開シンポジウムには750名、学会形式の2日目以降も19カ国から700名近い参加を得た。また、展示会には3200人の来訪者があった。世界最高齢国家である日本から、各企業や大学が行なっているユニバーサルデザイン研究を世界に向けて発信したい。その思いが、ようやく身を結んだといえる。 

個々人を尊重するまちづくり、ものづくり 

 この会議は、アメリカBostonにある、アダプティブ・エンバイロンメントセンターがかつて2回開催してきたUD国際会議の流れをくむものである。今回は日本のUD専門家と企業による組織委員会の主催であったため、第3回、という名称は使わなかったが、これまで世界をリードしてきたキーメンバーに加え、新たな研究者が多く参加し、熱心な討議が行われる内容の濃いものであった。 

 ユニバーサルデザインは、交通、建築、住宅、日用品、家電製品、情報通信機器、教育など、生活のあらゆるジャンルに必要な考え方である。年齢、性別、能力などにかかわらず、できるだけさまざまな人に使いやすいよう、まちやものや情報を作っていくことだ。初期段階からのユーザーの参画や、ひとりひとりにできるだけ合わせながら全体を考える視座を尊重するものである。 

だれにでも使える情報機器を

 私はITエリアを担当していたので、今回は、情報アクセシビリティの日欧米比較というパネルを企画した。EUのアクセシビリティ指針の実質的な責任者と、米国リハ報508条の司法省の担当者を招待して各地域の情報を伝えてもらった。その上で日本でJIS化を目指している情報アクセシビリティ委員会の委員長から、日本の方向性を語っていただいた。 

 政府の調達するIT機器やWebサイトは障害者にアクセシブルでなければならないという508条は、まだ訴訟は出ていないようだが、小さな不満の訴えはかなりあるようだ。次第にこの法律も米国社会根づいてきたということだろう。政府の理解や、この法律をユニバーサルデザインのものづくりの基本に据える企業も増えてきており、州政府や各国への影響力も増しているようである。 

 また、今回、EUの動きも活発で、EU全体で共通のアクセシビリティ基準を作ろうとしていることや、これからのユビキタス環境を考慮した研究開発プロジェクトが進んでいることなども報告された。日本でもようやくこの指針がJIS化されつつあり、今後、政府の基本方針となっていく可能性が高い。ITのような新しい技術こそ、UDが最も適用されやすいといえるだろう。 

高齢市場と技術で日本は世界貢献が可能

 各社のセミナーや展示はどこも工夫を凝らしており、世界各国から集まった研究者に対し、日本の高い技術力とUDへの真摯な姿勢をアピールしていた。また、作り手と使い手の距離を縮め、社会のすべてにおいて使い手が中心となる仕組みを作っていこうという「国際ユニバーサルデザイン宣言2002」の理念は、今後のものづくりの基本になるべきものである。世界最高齢国家として、また最先端の技術力を持つ国家として、日本が世界に貢献できることは何なのか、その回答の一つがこの会議にはあったと思われる。2年後のキューバ開催も楽しみである。 

国際ユニバーサルデザイン会議2002公式サイト
http://www.ud2002.org/jp/

- 2002年12月9日 「NIKKEI NET」ITニュース面コラム「ネット時評」 -

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