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田園都市的SOHOライフ

私のSOHOは横浜市青葉区にある。ここはインターネット接続率日本一なのだそうだ。更に素敵なことには、なかなか緑が多いのである。横浜というと港がイメージされるようだが、海からは15Kmも離れており、のどかな田園風景と住宅街が共存している。家からバスで5分も行くと、昔ながらの里山の風景を残す寺家ふるさと村がある。水車小屋に陶芸舎、谷戸を埋める稲穂が美しい。

私も実は、車で5分ほどの場所に、20坪の畑を借りている。時期にもよるが、野菜はほとんど自給しているといってよい。畑を休ませる真冬以外、毎週どっさりと大地からめぐみを受け取っている。もっとも、力のいる農作業はほとんど夫の担当で、私はひたすら収穫と草むしりの担当である。夏は膨大な量のトマトが採れる。消費できない分はトマトソースを作る。冷凍庫には何個もこのパックが保存されている。ナスもオーブンで一度に20個ぐらい焼いて冷凍してしまう。紫蘇の実も塩漬けにして保存する。今の季節は秋野菜のシーズンだ。小松菜、京菜、ほうれん草に中国野菜が大きなスーパーのポリ袋2つ分はとれる。食べ切れなくて近所や社員にわけるが、若い人には虫食いが多いのであまりうけていないようだ。無農薬有機栽培の証拠なのだが。。。。

この時期、私が一番好きなのは、かぶと大根だ。まだ小さくて葉がきれいなのを、何本も抜いてくる。かぶは洗っただけで丸のまま、おしょうゆをちょっとつけてかじる。甘い。なんというか、じわっと幸せな気分になれる。(なんて安上がりな幸せなんだろう!)葉はベーコンを入れてコンソメスープにする。固形スープの素だけでもしっかり美味しい。いつか家に泊まりに来た友人にこのスープを出したことがある。「おいしい。でも、このはっぱ、何?」「かぶよ」「え、かぶのはっぱって食べられるの?知らなかった」「!」 

そう、たいていの野菜のはっぱは、工夫すれば食べられるのだ。昔はさつまいものつるだって、里いもの茎だって食べていたじゃない、といっても、若い人には通じない。大根のはっぱだって、本当は根っこより、ずっと栄養価が高いのだ。若い葉はお味噌汁の具にしてもいいが、私は大きな葉でふりかけを作る。軽くゆでて細かく刻んだものを、ごま油を少し入れたなべでゆっくり炒める。醤油と酒で味付けし、しらすかちりめんじゃこ、それにいりごまを加え、またよく炒める。水分がほとんどなくなったら出来上がりだ。すっかり冷めてから小さなガラス瓶に詰める。冷蔵庫で10日はもつが冷凍も可能だ。 3歳の甥にもたくさん作って宅急便で送る。ビタミンCや繊維質を、食べ物から採ってほしい。ストレスの多い都会の生活に、足りない何かを贈るような思いである。まるで田舎のおばあちゃんだ。

毎日、パソコンにかじりついているからこそ、週末は大地にふれていたい。たんぼを渡る風を感じ、夕焼け雲を眺めていたい。

たけのこの冷凍法も、栗の冷凍保存の仕方も、ネットで検索した。冬野菜の越冬法も、今ではネットで教えてくれる。必要な情報はどこででも手に入るような、便利な時代になったのだ。ネットインフラが万全で、会議もオンラインでできて、どうしても必要なときは東京にも海外にも出られるのなら、何もごみごみした都会になんか住む必要はない。空気のいい、緑の多いところで、食べるだけの野菜を作って暮らしたい。

ブロードバンドがもたらすIT産業の未来は、何よりも自然と共生するものであってほしい。田園都市SOHOのこの牧歌的な生活が、全国で可能となることが、私の老後の?夢である。

-2001年11月  日本IBM Women's Column -

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