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ロボット工学に望むこと ユニバーサルデザインの観点から

「すみません」「ごめんなさい」障害者や高齢者が外出したり何か事を起こそうとすると、一日に何十回も言わなくてはならない言葉である。街やモノが、障害のある人でも高齢者でも、ごく普通に使えるように設計されていないために、いつも謝らなくてはならない。でも、これは考えてみれば不思議な話である。何か悪いことでもしたっていうのだろうか?作った人間が、そのようなユーザーの存在を意識していなかっただけなのではないだろうか?最初から高齢者も障害者も、妊産婦も子供連れも、普通に暮らせる街やモノになっていてほしい。それが、ユニバーサルデザインの原点である。

しかし、現実に、多様な状況の人に合わせるというのは、ものづくりやまちづくりを担当する人間にとっては、なかなか困難な課題ではある。コストや開発時間も気になる。喜んでもらえるかどうかわからない。券売機一つとっても、視覚障害者と車椅子ユーザーのニーズは同じではないし、文字の見え方も、弱視者と白内障の方では違うのだ。障害者に使いやすいものは 多様化するニーズを、どうすれば少ない機能に納めることが可能なのか?もちろん、人間系で対応できるサービス業の分野などでは人での対処も嬉しいサービスである。しかし、高齢者や障害者の社会進出が進むにつれて、一人で行動する機会も、無人の場所でのこう堂も増えていく。介助ロボット、ガイドロボットなどの、障害者の身近に存在して支援するロボットも、かわいいのを開発してほしいと思う。声も好みに応じて渋くしたり出来たほうが嬉しい。

また、自分の障害状況に応じて、臨機応変に対応してくれるパーベイシブ(埋めこまれた)機能をもつロボットが活躍するだろう。券売機や自販機は個々人の障害に合わせて画面や使い方、操作時間を変え、自動改札や自動ドアも障害の状況に合わせて使い方とガイドが変化する。パソコンやインターネットも、入力や出力を変化させ、使い方や情報表示が切り替わる。白杖やスマートカードで、個々の状況に自在に対応できるエージェント型のロボットが、数年のうちに出てきてほしいと切望している。

よく、2015年には日本の人口の4分の1が65歳以上、と言われる。しかし、あまり知られていないことだが、2005年には日本の成人人口の50%が、50代以上になるのである。最も購買力もあり、経験もあるこの層を、活かさなければ日本の国力にも影響する。情報通信やロボティクスが、高齢化社会の活性化につながる研究開発を行なうこと、それは、ユニバーサルデザインの観点から言えば、福祉でも社会貢献でもない。企業の社会的責任であり、かつ、結局は、将来の自分のためなのである。

数年後の日本で、「すみません」「ごめんなさい」を言い続けずに普通に暮らす、そんなおじいちゃん、おばあちゃんに、みんなでなろう。

- 1999年7月 -

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